Entry K+Dから分かるかもしれないチームのコンディション
1. はじめに
もういくつ寝るとメキシコメジャーですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。そろそろ生活リズムを壊しておかないと時差に置き去りにされてしまいますよ。
メキシコメジャーに備えて参加チームのスタッツをいろいろ調べているのですが、さすが各地域を勝ち抜いてきただけあって、各チームの数字に惚れ惚れします。たとえば下記のツイートなんかはラウンド取得率の散布図ですが、みごとにどのチームも攻防で50%を超えてきています。
Mexico Majorスタッツ第1弾(第2弾があるとは言ってない)、各チームの今シーズン攻防取得率です
— ボンゴレドミンゴ (@vongole_domingo) 2021年8月11日
各地域を勝ち上がってきただけあって、どのチームも取得率が50%を割っていないのは凄み
とにかくすごいSSGとCAG、防衛のTSM、攻撃のBDSといった感じ
地域内での飛びぬけ具合を見ても面白いかも pic.twitter.com/LKiDLLJAX4
要するに、活きがいい、調子がいい、とにかく強い15チームが揃っているわけですが、ここまで各チームの数値が良いと、粗探しをしたくなってしまうのが人の常。そこで私が目を付けたのが、表題にもあるEntry K+Dです。
ファーストキルに自信ニキ、こがらさん(@1kgrgm)も最近Entry K+Dに着目しておられましたが、これは各選手の「ファーストブラッドを取った数(Entry Kill)と取られた数(Entry Death)の和」です。言い換えれば、「ラウンドの最初の命のやり取りに参加した回数」となるでしょう。
RJLでSengoku Gamingの各選手がチーム内で
— こがら (@1kgrgm) 2021年8月10日
OP勝負をどれだけしているか[(1stキル+1stデス)/ラウンド数〕の数値です。
6節まででは防衛はfebar選手がかなりの頻度で戦っていました。しかし7節以降ではその頻度が少なくなっています。
左:6節まで 右:7節以降 pic.twitter.com/5cKiC1Ki8n
この数値は当然、選手間でシンプルに大小を比べて優劣を決めることはできません。例えばZOFIAメインとTHERMITEメインでは試合の中での立ち位置が異なりますからね。では、この数値から何が分かるかというと、私は「チームの段取りが上手くいっているかどうか」が分かるのではないか、と考えています。
前述の通り、この数値、ZOFIAメインとTHERMITEメインでは傾向が異なることが予想されます。クラブハウスの監視金庫のような一部のボムでは「補強壁を割ったのち割役がキルを取りに行く」ようなムーブも想定されますが、基本的には、作戦遂行において邪魔になる敵をフラッガーと呼ばれる選手が排除して、その後、割役が仕事をするのではないでしょうか。そう考えると、フラッガーのEntry K+Dは高く、割役のそれは低いことが想定されますし、大きな傾向として、スタッツとしてそのような分布になっているチームは段取りが上手くいっている、自分たちのやりたいことができているチームと言えるのではないでしょうか。
そこで本稿では、メキシコメジャー出場の権利を獲得した16チーム80選手を対象に、今シーズンのEntry K+Dを集計し、それを基にチームの調子を論じてみたいと思います。
2. 方法
SiegeGGから、下記の大会におけるEntry Kill, Entry Deathの数値を集計し、Entry K+DとEntry K-Dをシンプル足し算&引き算から求め、各選手の出場ラウンド数で除して、Entry K+D/Round, Entry K-D/Roundを指標として導出しました。80選手の数値を散布図に示し、それを基にあーだこーだ言っていきます。
- North American League 2021 Stage 2
- European League 2021 Stage 2
- Brasileirão 2021 Stage 2
- Copa Elite Six 2021 Stage 2
- APAC North Division 2021 Stage 2
- APAC South Division 2021 Stage 2
- APAC League 2021 Stage 2 Playoffs
3. 結果と考察
全選手のEntry K+D/Round, Entry K-D/RoundをそれぞれX, Y軸に取った散布図がこちら。
文字が小さいので適宜拡大して見ていただきたいのですが、見方を簡単に説明すると、X方向、Entry K+D/Roundは右に行けば行くほど、ラウンドの最初の命のやり取りに参加しているということになります。また、Y方向、Entry K-D/Roundは上に行けば行くほど開幕で5v4を作ることに成功しているということで、フラッガーとして多くの仕事をしていることになりますね。
その観点で上図をもう一度見ていただくと、SSGの好調もうなずけるというか、新加入のHotancoldがMASSIVE, Insaneであることがよく分かります。最初の勝負を多く引き受けたくさん勝つ、これは強い。そのそばにShaiikoがいるのも「いつもの」って感じがしますね。図の左側を見るとBriDがちょっと飛び出た位置にいますが、これは要するに最初に命のやり取りをすることを避けている、ということで、彼のポジションを考えるとこちらもやはり優秀、ということが言えそうです。BDSはElemzjeの不調が気がかりですが、ShaiikoとBriDのダブルエースがそれぞれ仕事してて良い感じですね。
ここで、ロール別のEntry K+Dを見ることを目的に、Main ATK OPがTHERMITE, HIBANA, MAVERICK, ACEである選手、すなわち割役の散布図を作ってみました。
BriDについては先ほど言及しましたが、それ以外のとびぬけた点を見ると、BlackRayとKayakがいますね。BlackRayに関してはたまたまSiegeGG上では割役メインですが、色々使うし特に防衛では前で当たるので、たくさんエントリー勝負をしていると言われても納得感があります。一方、Kayakは事前のイメージからすると、「え、ここにいるの?」という感じではないでしょうか。Jonka加入後も二人でなかよく現地にいるイメージですし、早めに勝負してるんだ、そして負けがちなんだ、という意外な数値になりました。Shasのインタビューを読んだ感じ、Kayakが基本的には司令塔みたいですが、自分自身で勝負に行くケースも多いんですね。あるいは虚を突かれているのか。余談ですが、このKayakのスタッツと、シーズン序盤までのVirtueの不調から、G2は順位以上に伸びしろがあると個人的には思っていて、それゆえに今大会の優勝予想はG2としています。ほかに気になるのはcotedでしょうか。若手ながら、BriD, Kamikaze, ThinkingNadeらの歴戦の猛者と同じような位置にいて、DWGの分業志向、それをこなす選手の力量を感じます。
分業志向という言葉が出たところで、今度は各チーム内でEntry K+Dを見て、最大値と最小値の差をそれぞれのチームごとに出してみました。これが大きいチームは分業志向、小さいチームは協業志向と言えるでしょう。
うーん、強いチームほど(最大値と最小値の差が)でかい!
と、いう感じにも見えますが、まあチームカラーの違いでしょう。ただし、iGなんかは前線のHysteRiXとSpeakeasyに対するLunarmetal、という分業を指向しているように見えるので、本来の調子であればもっとこの差は大きくなっていたんじゃないでしょうか。
4. おわりに
以上、今シーズンのEntry K+Dからあーだこーだ言いました。好みの問題だと思うのですが、エントリーで勝負する人がしっかり決まっていて、その人がちゃんと戦う、というチームは魅力的です。メキシコメジャーを見る時に、ほったん、Shaiiko、Joy棒らがしっかり戦えているか、BriD、Kayakは生きているかあたりを気にかけると、もしかしたらいい補助線が引けるかもしれません。