東南アジアの伝統芸能、FINKAタクティクスを数字で見る

1. 序論

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 突然ですが、APAC Northを他地域のリーグと比較したとき、明らかに異常な数字がFINKAのピック率であることには異論がないと思います。SiegeGGで4大リーグの昨シーズンの攻撃ピック率を見てみると、USとEUではFINKAのピック率は2パーセント未満、「映す価値なし」扱いですし、ハードピーク文化圏のBrazilでも3.3%であるのに対し、我らがAPAC Northでは8.2%のピック率を誇っています。

US Division 2020 Stage 2 — SiegeGG

European League 2020 Stage 2 — SiegeGG

Brasileirão 2020 Stage 2 — SiegeGG

APAC North Division 2020 Stage 2 — SiegeGG

 FINKAは決して弱いオペレーターではないですが、割職やらソフトブリーチャーやらで攻撃側の枠が逼迫しているのにわざわざ入れるほどではないという絶妙なポジションにいると思います。そんなオペレーターを毎日見れるという、傍から見ると不思議なリーグがAPAC Northなわけですが、ふと思いをはせると、FINKA使ってるの東南アジアのチームだけじゃね?という考えに至ります。かの地で圧倒的な支持率を誇るFINKAタクティクス、シンプルにアドレナリンサージでタイミングを合わせて突っ込むだけではなく、最近ではロックの成功率を上げるために引いた状態で焚いたりしていて、どこまで行きつくのかなとワクワクしながら見ています。FINKAタクティクスの戦術的意義は詳しい人に聞くとして、本稿では、APAC North 2020 Stage2のデータから、東南アジアの各チームがどのようにFINKAを使おうとしていたかを見てみようと思います。

2. 方法

 配信見ながら取ったデータから、APAC North Division 2020 Stage 2における東南アジア4チーム(Giants Gaming, Xavier Esports, Q-Confirm, Electrify Esports)の攻撃オペレーターピック、マップ、拠点、勝利チーム等々を集計しました。そこから、各チームのFINKAピック率やピック時の勝率を調べています。

3. 結果と考察

 下表は、東南アジア4チームの昨シーズンにおけるFINKAのピック率です。

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 東南アジアの4チームで合計37回、FINKAをピックしていますが、全12チームで52回ピックされているので、東南アジアだけでFINKA全体の71.2%を独占していることになります。すごいですね。そんな寡占FINKAですが、4チームのピック率を見ると、Giantsが実は1度もFINKAをピックしていないこと、Xavierは意外とFINKAを使っていないこと、Qconが3回に1回はFINKAをピックしていてヤバいことが見て取れます。こう見ると、東南アジアの伝統芸能というより、QconからEFYに受け継がれる一子相伝のタクティクスであることが何となく見えてきました。

 そんな37回のFINKAタクティクスですが、どのマップで使われているのでしょうか。その結果が下表になります。

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 この結果が調べていて一番びっくりだったのですが、FINKAタクティクス、めっちゃマップに依存します。37回中31回がオレゴンでのピックであり、Qconはオレゴンではほぼ固定ピックでFINKAを投入しています。ASHよりFINKAを優先している形。XavierとEFYは実はオレゴンでしかFINKAを使っていませんでした。オレゴンの地下や2階ではタイミングを合わせて突っ込んで撃ち合い勝負に持ち込まざるを得ない局面がどうしてもあると思いますから、そこでの勝率を上げるためにFINKAを投入するのは理に適っているのではないでしょうか。

 さて、FINKAタクティクス、肝心の勝率はどうでしょう。下表に示しました。

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 …なんということでしょう。XavierとEFYに関してはもしかしたらFINKAタクティクスを使わないほうがいいのかもしれません。オレゴンの防衛偏重を考えるとこの攻撃成功率は悪くはないのかもしれませんが、少なくとも良い数字ではありません。Qconみたいにヘビーユーズしないと、FINKAタクティクスは奇襲にすらなりえないことが分かりました。YINGとかで良いのでは(暴論)。

4. 結論

 東南アジアを象徴するFINKAタクティクスについて調べました。その結果、東南アジアのスタイルというより、Qconのスタイルであることが示されるとともに、基本的にはオレゴン限定タクティクスであること、そこまで効果的な奇襲になっていないことが分かりました。(ちなみに、XavierとEFYはFINKAの使い方が微妙に違っていて、Xavierは試合が劣勢になると使い始めるのに対し、EFYは序盤にさっと使って途中でFINKAを使わなくなるパターンが多いです)

 色物感がぬぐえないFINKAタクティクスですが、今シーズンは撃ち合いを強いられる場面が増える気がするので、もしかしたら流行るかもしれないですね(適当な締め)。Invitationalに注目したいところです。