「こいつ、戦いの中で成長してやがる」な選手を探そう

1. 序論

 タイトルは7割釣りなんですが、そろそろPL再開しそうですね。今週か来週には新シーズン「Shadow Legacy」が始まるでしょうし、EUのSTAGE 2は9月21日からスタートすることが発表されました。我らが親愛なるAPAC Northも同じくらいの時期に再開するんじゃないでしょうか。

  ACEとMELUSIの参入、新サブガジェットや新スコープの登場など、かなり大きく環境が変わることが予想されるSTAGE 2ですが、プレイするのは人ですから、やはり選手の皆様がどのような形、準備で新シーズンに入っていくのかが大きなポイントとなりそうです。私たち視聴者としても、誰が活躍するのか、誰がスターになるのかというところが一番わかりやすい見どころではないでしょうか。

 そんなわけで、タイトルに戻るのですが、STAGE 1、APAC Northの各チームは熾烈な順位争いを行い、選手の肉体的、精神的な疲労は我々の想像をはるかに超えたものだったでしょう。長いシーズン、コンディションやモチベーションを一定に保つことも困難でしょうし、パフォーマンスを維持することは大変だったと思います。そうした中、アジアの舞台で着実に経験値を積み重ね、「戦いの中で成長した選手」もいたはずです。そうした選手たちの経験値は目に見えないものでしょうが、指標を用いることでその一端をうかがい知ることはできそうです。つまり、試合を経るにつれスタッツの数値がよくなった選手は、もしかするとものすごい成長を遂げた選手なのかもしれません。来シーズン、STAGE 2でもそういった選手の活躍には期待が持てそうです。少し飛躍しますが、チームの中の1選手のスタッツが向上しているということは、個の能力を生かす環境が整った、あるいは選手がチームにフィットしたということで、チームとして練度が高まっていることを意味するかもしれません。STAGE 2の展望を夢想する上で、選手のスタッツの向上度を見ることは有用なのではないでしょうか。

 もちろん、スタッツの向上が「戦いの中で成長」だけを示しているわけではなく、向上の要因として、チームの戦術の変化や選手のロールチェンジ、好不調の波といったものが複合的に絡んでくる点には留意が必要です。(だからこそタイトルの7割は釣りです)

 そこで本稿では、APAC NorthのSTAGE 1を前半と後半に分け、それぞれのスタッツを比較することで、スタッツを大幅に向上させた選手を見つけ、その選手を「来シーズンの注目選手」とするとともに、向上の要因を考察したいと思います。

2. 方法

 いつも通り、SiegeGGでAPAC North Division 2020 Stage 1のスタッツを参照しました。前半と後半のスタッツを比較するため、第1日目から第5日目の試合ごとのスタッツを積み上げることで、全試合のスタッツを前半と後半に分離しました。参照したスタッツは下記の通りです。なお、KOSTは過去記事で推測した計算式を応用して前後半の数字を算出しています。

kill, death, entry kill, entry death, round, KOST, 1vX, plant

 これらのスタッツを基に、kill/round、kill/death、KOSTについて前半と後半の差分を取り、それぞれの差分が大きな選手BEST3をピックアップ、「来シーズンの注目選手」としました。

3. 結果

 下表が、前述した3部門において最も前後半の数字に差があった選手TOP3です。

f:id:Vongole_Domingo:20200911012156p:plain

 Mag(Fnatic)、GatoRada(CYCLOPS athlete gaming)、Funleks(Q-Confirm)、Nay..Pew(Xavier Esports)、Merieux(NORA-Rengo)、Pikaceu(Electrify Esports)、Papilia(NORA-Rengo)の6選手がランクインしました。これらの選手は、前半から後半にかけて大きくスタッツを伸ばした選手であり、来シーズンの爆発も期待できると考えます。一人ひとり見ていきましょう。

 まずMag選手ですが、彼はSTAGE 1の前半と後半でkill/roundとkill/deathの差分が最も大きかった選手です。彼ほどのビッグプレイヤーになると、「急激に成長した」からスタッツが伸びたとは考えにくく、主にポジションチェンジによるものでしょう。彼は前半、特に第4日目までは攻撃ではThermiteやHibanaをよく使っていたようですが、後半からはBuck、Nomadなど少しポジションを前目にシフトしています。これにより交戦回数が増加したことが、kill/roundの増加につながっていると言えます。ただし、kill/deathが向上していることから、普通に調子を上げてきていることも見て取れます。調子を上げたから前目のポジションに移ったのか、前目のポジションに移ったから調子が上がったのかは私から見ると鶏と卵ですが、なんにせよスタッツは確実に良くなっています。

 次はGatoRada選手です。Magに次ぐ形で2部門でランクインしており、怪物が本来の調子を取り戻したといった感じでしょうか。前半こそ全選手の中で中位に位置するスタッツでしたが、後半はHysteRiX選手に匹敵する数字をたたき出しています。改めて試合を確認していないので机上だけの印象で話しますが、前半と後半で大きくロールチェンジをしたわけではない気がしますし、チームの勝敗も前後半で変わらないので、彼個人が調子を上げてきたと言った感じではないでしょうか。ちなみに、EntryK-Dも前半から後半にかけて6-10→10-8と勝敗が逆転しています。

 昨シーズン限りでの引退を表明しているFunleks選手もランクインしました。彼は前半成績が振るわなかったことから後方職にジョブチェンジしたようですが(plant数が0→5と増加している)、それによってなにか整ったのか、成績を急激に回復させました。後半の東南アジア勢の躍進を担った一人と言えるでしょう。来シーズンに期待していたのですが引退ということで、他分野においても、ご活躍をお祈りいたします。

 東南アジア勢で言うと、Nay..Pew選手も後半に成績を伸ばした選手の一人です。この選手はMag選手とは逆で、前半にはSledgeやBuck、Wamaiといったつよい(KONAMI)オペを多くピックしていたのですが、後半になって少し引いたNomadやSmokeをピックするようになっています。所属するXavier自体が後半無敗なので、自身の調子が上がったというよりは、チームとして成熟したのか調子が上がったのか本気出したのか、とにかくチームとしてレベルアップしたことがスタッツ向上につながっているのではないでしょうか。

 Merieux選手、Pikaceu選手、Papilia選手はKOSTを前半から後半にかけて大幅に向上させました。KOSTは選手の安定度、貢献度を示す指標です。チームの勝利につながる活躍を後半で増やした選手と言えるのではないでしょうか。野良連合はシーズン中にロールチェンジをよく行っていたイメージがありますが、その結果として、あまり前半調子が上がらなかったMerieux、Papilia両選手が復活の兆しを見せており、ベテランの復権によって来シーズンの逆襲に期待がかかります。野良連合は勝敗こそ伸び悩みましたが、後半は各選手がスタッツを改善させていて、内容はよくなっているようです。Pikaceu選手は現在行われている国内リーグにてアタッカーに転向しており、調子の良さをチーム全体で活かしていきたいところですね。

4. 結論

 STAGE 1の前後半でスタッツを比較し、「戦いの中で成長した選手」を探しました。結果、成長というよりは、調子が上がったり、ロールチェンジが機能した選手がピックアップされましたが、なんにせよ、本稿で紹介した6選手に注目して、来シーズンを楽しみたいと思います。