わが国日本のMAP Tier List(2020年9月)

1. 序論

 いよいよ開幕しましたね、Japan Championship 2020!賞金総額は世界屈指の1500万円、優勝すればAPAC North昇格への挑戦権を得る、なんか有名な人いっぱい出てる、空前絶後の凄い大会です。

 まあ規模がものすごい大会ですが、中でも特筆すべきは試合のフォーマットでしょう。全試合BO3、ダブルイリミネーションという、本当に強いチームだけが生き残れると言ってもいい予選形式で、その分管理が大変そうで運営の皆様お疲れ様です。特にBO3に関しては、日本の国内大会ではファイナル系でしか見たことない気がします。だいたいBO1が採用されてますよね。

 個人的に、BO3は「自分たちが好きなマップを選べる」形式、BO1は「自分たちが嫌いなマップを蹴れる」形式だと思っています。これだけBO3のサンプルが取れる今大会は、日本の競技シーン全体が好むマップが分かる初めての機会ではないでしょうか。よく大会配信なんかを見ていると、「日本と世界のマップPick傾向が違う」ということが日本の競技シーンの課題として挙げられたりもします。ここで今大会のマップPick&BANを集計し、定量的に日本の競技シーンのMAP Tier Listを作成、他地域と比較することは、今後の競技シーンの益々の発展の一助になるかもしれません。

 そこで本稿では、Japan Championship 2020の初日におけるマップPick&BANの結果を集計し、それをBO3のメッカである北米リージョンのそれと比較するとともに、2020年9月現在のわが国におけるMAP Tier Listを作成します。

2. 方法

 Japan Championship 2020の大会公式ホームページには、トーナメント表と各試合のマップPick&BANの結果が示されています。

rainbow6.jp

 ここからマップPick&BANの経緯(1st BAN~2nd BAN~1st Pick~~Decieder)を抽出しました。抽出したマップデータを、試合ごとに、「嫌いなマップ」(1st BAN, 2nd BAN)、「好きなマップ」(1st Pick, 2nd Pick)、「どっちでもいいマップ」(3rd BAN, 4th BAN, Decider)に分類し、それぞれ集計しました。試合総数は160試合でした。

 本来、大会全体のマップデータを収集すべきかもしれませんが、試合が積み重なるにつれ、マップPick&BANは「相手が苦手なマップをPickする」などの読み合いの要素が強くなっていくことが想定されます。そのため、まだ読み合いがそこまで進行してないであろう初日のデータのみに絞って議論しました。

 同様の作業を、US Division 2020 Stage 1、Six August 2020 Major Qualifier - North American League、Six August 2020 Major - North Americaの30試合についても行いました。参照元は俺たちのSiege GGです。

siege.gg

3. 結果と考察

 結果を示していきます。まず、各マップのPickとBANの回数を見ていきます。下表は今回の大会と北米リージョンにおけるマップPick&BANの結果です。

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 今回の大会について見てみると、クラブハウス、ヴィラ、カフェ、オレゴン、海岸線、領事館、テーマパークの順で多くピックされていました。クラブハウスが70%もの確率でピックされており、相変わらずの人気がうかがえます。クラブハウスからオレゴンまでの4マップが出現率50%超であり、だいたいこれらのマップをやってることが分かります。ちょっとテーマパークの数字が低すぎる気もします。テーマパークは現在、全世界的に不人気な不憫マップなのですが、BO3であることを加味すると、それにしたってこの出現率の低さは異常です。もしかするとテーマパークはジョーカー的な役割として、2日目以降の勝負所で投入する目算が各チームあるのかもしれないです。

 北米と比較してみましょう。北米における各マップの出現率は30~50%の範囲に収まっており、今回の大会の傾向と比べるとだいぶコンパクトにまとまっていることが見て取れます。どのマップも均等にプレイされていますね。北米はクラブハウスが強すぎる某チームとか、カフェに自信ある某チームがいるので結構マップが分散したのかもしれないですね。

 次に、今回の大会における好きな/嫌いな/どっちでもいいマップの集計から、MAP Tier Listを作成していきます。下表が集計結果です。

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 「好きなマップ」はクラブハウス、オレゴン、ヴィラ、カフェ、海岸線、領事館、テーマパークの順で多く、Pickマップの順番と比較するとオレゴンの台頭が見て取れます。オレゴンはDeciderで選ばれるというより、Pickマップとして積極的にプレイされるマップなようです。やはりカフェと海岸線の間に大きな溝があり、ここがTierの分岐点になりそうです。

 次に、「嫌いなマップ」はテーマパーク、領事館、海岸線、オレゴン、カフェ、ヴィラ、クラブハウスの順で多くなりました。「好きなマップ」で下位に沈んだ海岸線、領事館、テーマパークですが、ここでは順番こそ同様であるものの、かなりBANの回数には差があり、特に海岸線と領事館、テーマパークの間に溝があります。また、クラブハウスとヴィラはほぼ最初の2回でBANされておらず、かなりTierが高そうです。面白いのが、オレゴンは好きなマップ2位である一方で、嫌いなマップ4位とまあまあ嫌われてもいることです。これを見ると、実はオレゴンは一番各チームの間で差が生まれているマップなのではないでしょうか。

 以上を踏まえると、下図のようなTier Listになりそうです。クラブハウスとヴィラが最上位、カフェとオレゴンが次点、海岸線と領事館がやや嫌われで、テーマパークがまあアレです。

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tiermaker.com

4. 結論

 Japan Championship 2020の初日のマップPick&BANを踏まえて、日本のMAP Tier Listを作成しました。結構各マップ間で大きな差が生まれた部分もあり、このTier間の差はなかなか埋まらないかもしれません。オレゴン、テーマパークといった新マップは相変わらず差を生み出すマップになりうることも示唆されました。

 まだまだJapan Championship 2020は続きますが、テーマパークを配信試合で見ることが出来る日を楽しみに待っています。