マップBANからCAGの勝敗を予想する

1. 序論

 Six Invitational 2021まであとわずか、皆様いかがお過ごしでしょうか。Wildcardが出場できないという悲しいニュースはありましたが、大会のフォーマットが発表されたり、謎の中止デマが出回ったり、界隈が騒がしくなってきましたね。色々発表されてワクワクはしているものの、そのワクワクをぶつける先がないファンがやり始めるのが勝敗予想、優勝予想です。僕はLiquid, BDS, TSMの3連単を買おうと思っています。

 特に、日本チームとしては2年ぶりのInv出場となるCAGがどこまで行くか、というのが界隈の関心事でしょう。けっこうTLでCAGの勝敗予想してる人を見ます。このビッグウェーブに乗って僕もやってみようと思ったのですが、よくよく考えたらプレイするマップが分かんないのに勝敗分かるわけねーなってなりました。なので、マップBANの予想を僕なりにやってみて、その上でCAGがどこに勝ちそうか考えてみます。

 本稿では、過去のマップBANデータとマップ別勝率から、CAGがグループAで戦う9試合のマップBANを予測し、それを基にCAGの勝敗予想をしてみたいと思います。

2. 方法

 CAGとCAGが戦う9チーム(DZ, C9, FURIA, G2, Liquid, FaZe, Empire, oNe, BDS, 対戦順)の、リーグ戦のStage1, 2、2回のMajor大会、地域FinalにおけるマップBAN履歴、またマップ別勝率を集計しました。データソースはいつも通りSiegeGGです。

 そのデータを基に、以下の手順でBANマップ候補を選定し、独断と偏見で試合ごとのマップBANを予測、各試合の勝敗を予想しました。

① 固定BANマップ→② 相手が得意なマップ→③ 自分が苦手なマップの優先度でBANマップを3つ決定する

 実際のBAN戦略はデータに加えて戦略戦術的心理的様々な要因が絡んでくると思いますが、正直僕にはその領域がよくわからないので、今回はシンプルにデータオンリーの予測になっています。

3. 結果と考察

 ちょっとここから長いので先に結論を書いておくと、僕はCAGが4勝5敗(FURIA, G2, FaZe, oNeに勝利)でグループステージを5~8位で抜けると予想します。理由は以下。

CAGのマップ遍歴

  CAGのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 ほぼほぼテーマパークを固定でBANしています。自分たちからオレゴンを蹴ることは少なく、勝率もいいので「データからわかる」CAGの得意マップはオレゴンでしょう。その他ヴィラ、領事館辺りも、試合を観ているとCAGけっこう得意にしてそうです(この時点で外してたらもうどうしようもないですが)。まあ全マップ強いんですけどね。クラブハウスは勝率が伸び悩んでいますが、相手がGiantsだったりするのでそこまで苦手マップとはいえなさそう。BANの多さを考えると、海岸線は面倒くさがってそうですね。…CAGを選んでおいてなんですが、このチームのBANを予測するの相当難しいです。

 これを踏まえて、各試合のマップを予測していきます。

 vs DarkZero Esports (予想:カフェ、DZ win)

   DZのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 CAGと同様にテーマパークが固定BANです。どちらかが蹴ると思うのですが、DZ側は最悪テーマパークでもいいやと思ってそうなので、CAGが蹴るでしょう。CAGからすると、クラブハウスと領事館はやりたくないでしょうね、DZが相当自信持っていそう。一方のDZですが、CAGの得意マップであるヴィラ、オレゴンは蹴ってきそうです。残るは海岸線、カフェですが、ここは決め手に欠きます。マップBANの先攻後攻にもよりますが、DZは不確定要素が大きい海岸線を嫌うんじゃないかな、と思います。

 以上、CAGがテーマパーク、クラブハウス、領事館、DZがヴィラ、オレゴン、海岸線を蹴り、カフェが残るのではないでしょうか。カフェのCAG、好きなんですけどDZが一枚上手じゃないかな~と素人は思います。

 vs Cloud9 (予想:クラブハウス、C9 win)

    C9のマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 C9はヴィラとテーマパークが固定BANですね。CAGがヴィラ得意なので、ヴィラはC9が最速で蹴ってきそう。テーマパークをどっちが蹴るかですが、僕はCAGが蹴ると思います。テーマパークで勝負を賭けてもいいのですが、僕の予想だとCAGは初戦落としているので、堅実なBAN戦略になるのではないでしょうか。また、CAG側からすると、自分たちがオレゴンを持っているとはいえC9相手にはやりたくないんじゃないかと想像します。あと、海岸線はC9強いのでそこも蹴るでしょうね。一方のC9側は、最近よくBANしていてCAGが得意な領事館、リーグ戦でCAG相手に負けているカフェをBANするんじゃないでしょうか。

 以上、CAGがテーマパーク、オレゴン、海岸線、C9がヴィラ、領事館、カフェを蹴り、クラブハウスが残るのではないでしょうか。ここはC9が勝つと予想します。

 vs FURIA Esports (予想:カフェ、CAG win)

  FURIAのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 固定BANマップはなく、得意マップと不得意マップの差が激しいチームです。CAG側からすると、まずテーマパークは蹴るでしょうね。海岸線も、最近FURIAが結果を残しているマップ(集計期間外)なので蹴りたいところ。一方のFURIAはCAGが得意なオレゴン、ヴィラ、領事館を蹴りそうです。そうなるとカフェとクラブハウスからCAGが選べそうですが、ここは正直どっちでもいいと思います。FURIAがこれまで多くBANしているカフェを残すんじゃないかな。

 以上、CAGがテーマパーク、海岸線、クラブハウス、FURIAがオレゴン、ヴィラ、領事館を蹴り、カフェが残るのではないでしょうか。CAGWINでいきましょう。

 vs G2 Esports (予想:海岸線、CAG win)

   G2のマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 オレゴンを蛇蝎のごとく嫌い、クラブハウスもまあまあ避けているチームですね。この2マップはG2が蹴るでしょう。カフェが比較的勝率低い&回数やってるので、CAGが研究できるという観点からG2のBANマップになりそう。逆にCAGは固定のテーマパーク、G2が強いヴィラを蹴るでしょう。残った海岸線と領事館、G2の勝率から海岸線を残す判断をしそうです。

 以上、CAGがテーマパーク、ヴィラ、領事館、G2がオレゴン、クラブハウス、カフェを蹴り、海岸線が残るのではないでしょうか。リベンジの期待を込めてCAGWIN予想で。

 vs Team Liquid (予想:クラブハウス、Liquid win)

   LiquidのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 CAGがテーマパーク、Liquidがヴィラを固定でBANするでしょう。CAGサイドからすると、領事館とカフェはLiquidの勝率的に避けたいんじゃないでしょうか。翻ってLiquidサイドは「CAGがG2に勝っている(仮)」海岸線を蹴りそう。残るはオレゴンとクラブハウス、CAGが得意なオレゴンは消しそうですね。

 以上、CAGがテーマパーク、領事館、カフェ、Liquidがヴィラ、海岸線、オレゴンを蹴り、クラブハウスが残るのではないでしょうか。僕は今大会Liquid無敗で終わるんじゃねーかなと思ってるのでここはLiquidが勝つと思います。

 vs FaZe Clan (予想:カフェ、CAG win)

    FaZeのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 テーマパークをどう見るかですね。一切FaZeがプレイしていないこのマップ、逆に不気味なのでCAGが蹴りそうです。それからFaZeが集計期間中一切BANしていないヴィラはCAGが嫌うでしょう。一方のFaZe側からすると、自分たちが勝てていなくてCAGが得意としているオレゴン、領事館は蹴るでしょうね。海岸線もまあまあ嫌いな気がする&「CAGはG2に勝っている(仮)」のでFaZeが蹴るんじゃないかな。残ったクラブハウスとカフェ、ここまでの試合で2回ずつやっていますが、ラテンのFURIAと戦っているカフェをCAGは残す気がします。

 以上、CAGがテーマパーク、ヴィラ、クラブハウス、FaZeがオレゴン、領事館、海岸線を蹴り、カフェが残るのではないでしょうか。すでにFURIA相手にカフェをプレイしていて、ラテンのカフェを知っているCAGが勝ちそう。

 vs Team Empire (予想:カフェ、Empire win)

     EmpireのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 グループリーグ後半戦、上位チームは本選を見据えて、やってないマップをそのまま隠し通すためのBAN戦略を組んでくると思います。それに伴い、テーマパークとヴィラをEmpireが蹴ると予想します。もう一つは苦手なオレゴンかな。一方のCAGは、Empireの得意マップであるクラブハウスと海岸線を蹴るでしょう。加えて、領事館を隠す戦略を取るかもしれません。

 以上、CAGがクラブハウス、海岸線、領事館、Empireがテーマパーク、ヴィラ、オレゴンを蹴り、カフェが残るのではないでしょうか。実績値的にEmpireが勝つ…かな…?

 vs Team oNe Esports (予想:オレゴン、CAG win)

  oNeのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 CAGがテーマパークを、oNeがクラブハウスとカフェを蹴るでしょう。oNeはStage2以降、露骨にこの2マップを避けています。CAGが得意なオレゴン、ヴィラ、領事館のうち、自身でピックすることの少ないヴィラをoNeが蹴りそう。CAGに残された選択肢はオレゴン、領事館、海岸線。ラテンの海岸線は嫌な感じがありそうですし、最も実績のあるオレゴンを選ぶでしょう。

 以上、CAGがテーマパーク、領事館、海岸線、oNeがクラブハウス、カフェ、ヴィラを蹴り、オレゴンが残るのではないでしょうか。オレゴンならCAGが勝つんじゃないですかね。

 vs BDS Esport (予想:海岸線、BDS win)

  BDSのマップBAN履歴およびマップ別勝率は下表の通りです。

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 最終戦、多分BDSは冒険するインセンティブが無いので、無難なBANをしてきそうです。よく蹴っているヴィラとテーマパークは自身でBANするでしょう。一方のCAGは、BDSがよく勝っているクラブハウス、オレゴン、カフェ、領事館がBAN候補になるかと思います。クラブはCAGが勝てていない、領事館は隠したいと考えられるのでBANの優先度は高そう。オレゴンを本選前にあまり見せたくない気がするので、カフェを残しそう。そうなるとBDSサイドはカフェと海岸線から選べるわけですが、もう順位が固まっていると想像されるので、海岸線で試したいことを試すんじゃないでしょうか。

 以上、CAGがクラブハウス、領事館、オレゴン、BDSがヴィラ、テーマパーク、カフェを蹴り、海岸線が残るのではないでしょうか。BDSが勝つと思います。

4. 結論

 えらく長くなりましたが、CAGがグループAで戦う9試合のマップBANを予測し、それを基にCAGの勝敗予想をしてみました。最も戦うマップはカフェ、4勝5敗でグループ通過、Lower Bracketへ、という予想を立てて観戦したいと思います。これが外れて全勝するCAGが一番見てみたい。

当たってたらなんかください。

差がつくマップ、差がつかないマップ

1. 序論

 昨日、ふり~ださんがこんな動画を上げていました。

www.youtube.com

 もう皆さんご覧になったかと思いますが、2月に開催されるSix Invitational 2021で久しぶりにシージを観戦する人向けに、現環境におけるマップの人気度と攻防のバランスを解説しておられます。かなり興味深い内容で、FAV GamingのShiN選手やOdeNMisoコーチも言及しておられましたが、この動画の中で僕が気になったポイントが、「習熟度によって差がつきやすいマップがある」というご指摘です。

 ちょっと話が変わりますが、以前、僕はTwitterで下記のように、マップごとの防衛取得率を例に出して競技シーンマップの攻防のバランスについて言及したことがありました。

  このツイートで僕は、領事館の防衛取得率が思いのほか高いことを指して、(半ば冗談気味に)領事館は防衛マップであると結論付けています。この結論、改めて考えるとかなり論理の飛躍があります。なぜなら、マップの防衛取得率とはチームの戦術の相性や実力差、オペレーターBAN、マップの攻防のバランスなどを総合して算出される平均的な結果であって、その結果をもって攻防のバランスのみを議論するのは難しい(ノイズが多い)と考えられるからです。ふり~ださんが動画内で、「今回の分類はデータを基にしていない」「防衛取得率の実績を見ていない」的なことを仰っていましたが、まさに、実績値のみを用いて攻防のバランスの議論をするのは片手落ち感があるため、攻防のバランスの議論は有識者の主観、理論に頼るべきであると僕は思います。

 ただ、防衛取得率というデータを使って競技マップをうだうだ論じることが全くできないかというと、これには別の使い方がある気がします。話が戻りますが、「習熟度によって差がつきやすいマップがある」というご指摘、これは言い換えると、「チームによって防衛取得率が大きく異なるマップがある」という議論ではないでしょうか。すなわち、あるマップについてチームごとの防衛取得率のばらつきを見ることで、そのマップが「試合で差をつけやすいマップ」かどうかが分かるのでは。これを知ってから観戦すると、試合の流れを考えるうえで一つの軸ができると思います。

 そこで本稿では、現行の競技シーン7マップについて、今シーズンのトッププロたちの試合における防衛取得率のばらつきから、習熟度によって違いを生み出せるマップか否かを分類していきたいと思います。

2. 方法

 Siege GGから、今シーズン行われた下記の大会について、各試合各チームの防衛取得率をマップごとに数え上げました。

・Canada Division 2020 Finals

・Oceania 2020 Finals

・South Asia 2020 Finals

・APAC North Division 2020 Finals

・European League 2020 Finals

・Six Invitational 2021 Asia-Pacific Qualifier

・Six Invitational 2021 North America Qualifier

・Six Invitational 2021 Europe Qualifier

・Six Invitational 2021 Latin America Qualifier

 プレイされた総マップ数は121。7マップそれぞれについて防衛取得率のヒストグラムを取り、ばらつきを見ました。

3. 結果と考察

 まず初めに、一応、各マップの平均防衛取得率を見ておきましょう。

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 順番がめちゃくちゃなのはご容赦願いたいのですが、ざっくり、今シーズンの全マップ平均防衛取得率は54.0%でした。やや防衛側が多くラウンドを獲得していますが、昨シーズンよりはマシになっていそうです。20秒メタからの解放を感じます。で、数字の上では、いまのところ領事館と海岸線が攻撃側がラウンドを多く取得しており、オレゴン、テーマパーク、カフェあたりが防衛側に大きく傾いていますね。クラブハウスとヴィラが比較的バランスしているように見えます。まあこれはあくまで平均値、こういう結果でした、というところですね。問題はこの中身がどれだけばらついているかです。

領事館

 まず、領事館を見てみましょう。守れないマップと言われて久しく、実際に今シーズンは平均的には守れてない方のマップです。

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 グラフの見方ですが、防衛取得率を20%刻みに5本のバーに分類しています。例えば、今回の集計の範囲だと、防衛取得率が0%~20%が7件あった、ということになりますね。

 領事館は13回ピックされたので、13×2=26チームが防衛したわけですが、こうして見ると5本のバーの高さにほとんど差がないことが分かります。試合によって防衛取得率が大きく異なる、すなわち、チームの練度の差が出やすいマップであることが言えるのではないでしょうか。とはいえ、最も高いバーが0%~20%であることを考えると、「基本的にはあまり防衛で取れないが、練度の高いチームはきっちり防衛を取ってくる」という考察が可能かと思います。 

 ちなみに、どういうチームが具体的に領事館の防衛を多く取っているかを見てみると、CAG(60%)、BeastCoast(80%)、G2(67%)といった名前が上がってきます。特にG2はEU FinalのBDS戦で独特の配置を敷いて2階ボムをしっかり守り切っており、領事館を手札として「持っている」チームなのでは。InvitationalではCAGとG2がグループ予選からぶつかりますが、領事館の攻防をぜひ見てみたいです。

海岸線

 次は、マッププール入れ替え候補筆頭(だと勝手に思っている)海岸線です。海岸線、15回ピックされ、30チームが防衛しているのでまあまあ人気がないことはないのですが、見てると自然と口がほころぶ(苦笑い)展開が多いですよね。

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 領事館とは異なり、防衛取得率の分布がかなり左に寄っています。領事館は「基本的にはあまり防衛で取れないが、練度の高いチームはきっちり防衛を取ってくる」でしたが、海岸線は「みんな等しく守れない」マップであると言えるでしょう。ただし、一番高い山は40%~60%の山なので、ラウンドスコアで言えば3-3で折り返す試合が最も期待されます。印象ほど壊滅的に守れていないわけではなさそうです。

 ちなみに、海岸線防衛を通しまくった(60%~100%)チームが6チームあることがグラフから見て取れますが、この内訳はMkers1、Chaos1、RentFree1、Malvinas1、FURIA2となっています。特にFURIAとMkersについては、Invitationalにおいてはアンダードッグ的な印象があるかもしれないですが、うっかり海岸線を選んでしまうと思い切り噛み砕かれる恐れがあります。

クラブハウス

 ここ1年くらい大人気マップであるクラブハウスを見てみましょう。集計期間中も最も多くピックされており、25回プレイされ、50チームが防衛を行いました。いわゆる手順マップ、攻撃側がやるべきことがある程度固定化されているこのマップこそ、チームの練度が試されるという印象が強くあります。 

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 領事館と同等の傾向がヒストグラムから読み取れます。5本のバーのばらつきがなだらかであり、試合によって防衛取得率がまちまちです。中央3本のバーが高く、4-2、3-3、2-4で折り返すケースが6割くらいあるのかな。「攻防のバランスが取れているが、練度の差がよく出るマップ」と言えるかもしれません。

 Invitational出場チームの動向を見ると、G2、FURIAが安定して防衛を通している一方で、Altiora、VP、BDSあたりのチームが安定していません。相手チームにもよるので一概には言えないですが、領事館に引き続き、G2の得意マップと言えるのではないでしょうか。

オレゴン

 次は、リワークされ、競技シーンに戻ってきてから引っ張りだこのオレゴンです。21回ピックされ、42チームが防衛したこのマップ、昨シーズンまでと比較するとやや人気が落ち着いたかな、という感じ。

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 かなり防衛取得率の分布が固まってますね。3分の2のチームが3-3ないしは4-2で防衛を取得した、という形になっています。今回は拠点ごとの取得率を見ていないので推測になりますが、地下と2階に比して1階の拠点が脆いのがこのマップの特徴だと思うので、各チーム地下と2階を確実に取得し、1階は…という感じなんでしょう。「取れる拠点が限定されており、チームの練度に差がない」マップと言えるのでは。

 どこも同じような防衛取得率なので特筆すべきチームはいないのですが、強いて言えば、ここまでよく名前を出しているFURIAはあまりオレゴンで防衛を取れていません。そんぐらいです。

ヴィラ

 実はずっとそんなに人気ないマップ、ヴィラです。集計期間では16回ピックされ、32チームが防衛しています。上記の平均防衛取得率ではかなり攻防のバランスが取れているように見えましたが、実際のところどうなんでしょう。

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 …僕にはどうこの結果を見ればいいのかよく分かりません。バーの分布がなだらかに右肩下がりですが0~20%のバーだけ露骨に低いので、「チームによって差が出るマップで、基本攻撃有利だが防衛側が全く取れないわけではない」という玉虫色の評価になってしまいました。一番高いバーが20%~40%なので、攻撃優勢の折り返しが多いマップと言えるのか?とはいえ他のバーとの差がそこまでないので、チームによって差が出るマップという見方もできます。ヴィラってここ最近まで防衛が有利なイメージがあったのですが、何があったのでしょう。盾メタ弱体化の煽りを一番受けているマップかもしれません。

 Invitational出場チームとヴィラの関係性ですが、実は集計期間中、当該チームがヴィラを戦った事例がほとんどありません。わずかにWildcardやMkersがプレイしてるくらいですね。各チーム、ヴィラに嫌な思い出があるんでしょうか。

テーマパーク

 最近だとVirtue選手のスーパークラッチが記憶に新しいですが、圧倒的不人気マップのテーマパークです。集計期間中にBO5がちょくちょくあったおかげか、11回もプレイされ、22チームが防衛しています。マニアックなマップなので練度の差が出そうですが、実際どうだったんでしょうか。

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 かなりバーの高低差が見て取れます。60%~80%の山が図抜けているので、「どのチームもある程度防衛取る」マップだと言えそうですね。結局、このマップってどの拠点が一番強いんでしょうか。ランクマッチだと謁見室が1stピックになりがちですが、競技シーン見ていると儀式の間以外はどこも1stピックで使われていますよね。

 Invitational出場チームも安定して防衛でラウンドを取得しています。そのレベルのチームになるとテーマパークの防衛で大事故を起こすことはないんでしょうね。逆に言えば、テーマパークは奇襲として用いてもあまり効果がなさそう、と言えるでしょう。

カフェ

 最後に、実績値では完全に防衛有利のカフェを見てみましょう。20回ピックされ、40チームが防衛しています。ふり~ださんの動画の中でも言及されていましたが、攻撃側が時間との闘いを強いられるマップな気がするので、実際に防衛が有利なんでしょうね。

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 予想通り、右肩上がりのバーの並びとなりました。「そこまでチーム間の差が出ない防衛で取り合うマップ」と言えるのではないでしょうか。カフェリワーク当初は3階が最強だったと思うのですが、研究が進むにつれ、読書を1stに取るチームも増えてますよね。掘削機展示室も奇襲的に使える拠点だと思いますし、選択肢が豊富で防衛側が快適に守れるマップと言えるのでは。L字が守りにくくなったならもっと前線上げてシガーラウンジ中で守ればいいじゃない、というゴリラ的発想好きです。

4. 結論

 現行の競技シーン7マップについて、今シーズンのトッププロたちの試合における防衛取得率のばらつきから、習熟度によって違いを生み出せるマップか否かを分類してみました。結果を下表にまとめます。

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 攻防実績値はあくまで実績値で、実際の攻防のバランスとは別物である点にはご留意ください。まあ恣意的なまとめではありますが、こうしてみると、いわゆる攻撃有利マップと考えられている海岸線と領事館もその性質が異なること、クラブハウスやヴィラといったマップはチームの差が出やすいと予想されること、防衛の取得率が高いマップはそこまでチーム間の差が出ないことが示唆されました。一つの考え方として、試合観戦の参考になれば幸いです。Invitational楽しみですね。

東南アジアの伝統芸能、FINKAタクティクスを数字で見る

1. 序論

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 突然ですが、APAC Northを他地域のリーグと比較したとき、明らかに異常な数字がFINKAのピック率であることには異論がないと思います。SiegeGGで4大リーグの昨シーズンの攻撃ピック率を見てみると、USとEUではFINKAのピック率は2パーセント未満、「映す価値なし」扱いですし、ハードピーク文化圏のBrazilでも3.3%であるのに対し、我らがAPAC Northでは8.2%のピック率を誇っています。

US Division 2020 Stage 2 — SiegeGG

European League 2020 Stage 2 — SiegeGG

Brasileirão 2020 Stage 2 — SiegeGG

APAC North Division 2020 Stage 2 — SiegeGG

 FINKAは決して弱いオペレーターではないですが、割職やらソフトブリーチャーやらで攻撃側の枠が逼迫しているのにわざわざ入れるほどではないという絶妙なポジションにいると思います。そんなオペレーターを毎日見れるという、傍から見ると不思議なリーグがAPAC Northなわけですが、ふと思いをはせると、FINKA使ってるの東南アジアのチームだけじゃね?という考えに至ります。かの地で圧倒的な支持率を誇るFINKAタクティクス、シンプルにアドレナリンサージでタイミングを合わせて突っ込むだけではなく、最近ではロックの成功率を上げるために引いた状態で焚いたりしていて、どこまで行きつくのかなとワクワクしながら見ています。FINKAタクティクスの戦術的意義は詳しい人に聞くとして、本稿では、APAC North 2020 Stage2のデータから、東南アジアの各チームがどのようにFINKAを使おうとしていたかを見てみようと思います。

2. 方法

 配信見ながら取ったデータから、APAC North Division 2020 Stage 2における東南アジア4チーム(Giants Gaming, Xavier Esports, Q-Confirm, Electrify Esports)の攻撃オペレーターピック、マップ、拠点、勝利チーム等々を集計しました。そこから、各チームのFINKAピック率やピック時の勝率を調べています。

3. 結果と考察

 下表は、東南アジア4チームの昨シーズンにおけるFINKAのピック率です。

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 東南アジアの4チームで合計37回、FINKAをピックしていますが、全12チームで52回ピックされているので、東南アジアだけでFINKA全体の71.2%を独占していることになります。すごいですね。そんな寡占FINKAですが、4チームのピック率を見ると、Giantsが実は1度もFINKAをピックしていないこと、Xavierは意外とFINKAを使っていないこと、Qconが3回に1回はFINKAをピックしていてヤバいことが見て取れます。こう見ると、東南アジアの伝統芸能というより、QconからEFYに受け継がれる一子相伝のタクティクスであることが何となく見えてきました。

 そんな37回のFINKAタクティクスですが、どのマップで使われているのでしょうか。その結果が下表になります。

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 この結果が調べていて一番びっくりだったのですが、FINKAタクティクス、めっちゃマップに依存します。37回中31回がオレゴンでのピックであり、Qconはオレゴンではほぼ固定ピックでFINKAを投入しています。ASHよりFINKAを優先している形。XavierとEFYは実はオレゴンでしかFINKAを使っていませんでした。オレゴンの地下や2階ではタイミングを合わせて突っ込んで撃ち合い勝負に持ち込まざるを得ない局面がどうしてもあると思いますから、そこでの勝率を上げるためにFINKAを投入するのは理に適っているのではないでしょうか。

 さて、FINKAタクティクス、肝心の勝率はどうでしょう。下表に示しました。

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 …なんということでしょう。XavierとEFYに関してはもしかしたらFINKAタクティクスを使わないほうがいいのかもしれません。オレゴンの防衛偏重を考えるとこの攻撃成功率は悪くはないのかもしれませんが、少なくとも良い数字ではありません。Qconみたいにヘビーユーズしないと、FINKAタクティクスは奇襲にすらなりえないことが分かりました。YINGとかで良いのでは(暴論)。

4. 結論

 東南アジアを象徴するFINKAタクティクスについて調べました。その結果、東南アジアのスタイルというより、Qconのスタイルであることが示されるとともに、基本的にはオレゴン限定タクティクスであること、そこまで効果的な奇襲になっていないことが分かりました。(ちなみに、XavierとEFYはFINKAの使い方が微妙に違っていて、Xavierは試合が劣勢になると使い始めるのに対し、EFYは序盤にさっと使って途中でFINKAを使わなくなるパターンが多いです)

 色物感がぬぐえないFINKAタクティクスですが、今シーズンは撃ち合いを強いられる場面が増える気がするので、もしかしたら流行るかもしれないですね(適当な締め)。Invitationalに注目したいところです。

備忘録:Six Invitational 2021 APAC Closed予選のデータたち

1. 初めに&方法

 12月14日から12月18日にかけて実施されたSix Invitational 2021 APAC Closed予選のデータをまとめました。SiegeGGとか併せてみていただいて、昨シーズンとの環境の違いとかを考えるきっかけになれば幸いです。

 計7試合194ラウンドを観戦しながら、マップ、対戦チーム、BANオペレーター、ピックオペレーター、6thピック等々を記録しました。

2. データ

ピックマップとラウンド取得率

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 最も人気だったマップはカフェ。というか、Xavierが好きだったのがカフェ。領事館もCAGが好きなマップという感じ。試合数がそんなに多くないので現環境が攻撃有利なのか防衛有利なのかよく分かんないですが、カフェの防衛取得率はすごいですね。どんだけおにぎり選手がシガーラウンジで頑張ったかを示してるかと思います。

BANオペレーター

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 やはり攻撃オペレーターで最も多くBANされたのはTHATCHER。この傾向はしばらく変わらなさそうですが、NOMADが次点なのは新鮮ですね。領事館が多かったこともありますが、今シーズンは動き回りたい防衛のチームが増えそうですし、そうなるとNOMADのBANは増えるのかもしれないですね。DOKKAEBIは完全にCAG対策のターゲットBANです。あとCRESTがよく使っていたのでXavierがDeciederで蹴ってた気がします。BBやTWITCHのBANは今シーズンならではかもですね。

 防衛の方だとVALKYRIEが最もBANされていました。領事館では必須BANのオペですが、カフェでも嫌われていて4/6くらいでBANされていました。そのほかで言うと、盾メタに必要なWAMAI、GOYO、JAGER、(WARDEN)あたりのBANはオペレーター編成に大きな影響を与えていそうです。今シーズンならではの有効なBANと言えるのではないでしょうか。

攻撃オペレーターのピック率

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  防衛オペレーターは同じマップでも拠点ごとに違う構成になりますが、攻撃オペレーターは拠点ずらしに対応するため、拠点を問わず同じ構成になりがちな気がします。USが特にその傾向あるイメージ。なので、攻撃オペレーターについてマップごとのピック率を調べてみました。

 特筆すべきは、昨シーズン必ずと言っていいほど同時にピックされていたASHとZOFIAが、片方のみピックされるシーンが増えたことでしょうか。カフェやオレゴン、ヴィラといった、固く重要拠点を守るようなマップではダブルピックされているケースが多いですが、その他のマップでは必ずしもダブルピックが主流ではなくなっている気がします。割職もよく見てみるとACEとMAVERICKの2強ではなくて、領事館やテーマパークといったバカでかい穴を即座に開けたいようなマップではTHERMITEの採用率が高いですし、ハッチや遠距離ではHIBANAの強さが光っています。THERMITEくんが弄られ割職みたいな風潮ありますが、今のバランスは割職の個性が光っていて中々良いのではないでしょうか。あとは領事館ガレージの置物をクリアできるTWITCHや、遊撃が間違いなくいるテーマパークでのJACKAL、CRESTが使っていたDOKKAEBIあたりが入ってますね。

防衛オペレーターのピック率

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 マップごとに見てもあまり意味ないし、拠点ごとに見るには標本数が少ない気がするので、一括で防衛オペレーターのピック率を出しました。マップの偏りの差に注意する必要がありますが、単純に昨シーズンとのピック率の差分を見ると、MUTE、ECHO、LESION、MOZZIEのピック増、SMOKE、JAGER、VALKYRIE、MAESTROのピック減が顕著です。ECHOは昨シーズンにグローバルBANがあったこと、VALKYRIEはClosed予選でカフェと領事館が多く、BANされやすかったことを加味すると、やはり相手の情報量を制限してラフに戦う防衛スタイルが増え、逆に現地や重要拠点を硬くする構成が少なくなったことが見て取れます。

3. まとめ

 マップ、オペレーターBAN、オペレーターピックの観点でClosed予選を俯瞰しました。全体的な傾向としてなんとなーく昨シーズンとは雰囲気が違うということが、体感のみならずデータからも見て取れたんじゃないでしょうか。Invまでこの環境で基本的には進行していくわけですが、メタの変身をあと何回残しているのか気になります。このまま行けば、昨シーズンまでの勢力図だけでは予想が立てにくい、波乱の多い大会になるかもしれないですね。ワクワクです。

プロはイェーガーなしでどうやって守ってるの?①

1. 序論

 新シーズンが始まって2週間経ちましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今シーズンはいつも以上にオペレーターの修正が多く入っており、環境の変化が待ち望まれるシーズンですね。

fpsjp.net

 色んな修正点がありますが、中でも影響が大きそうな修正はJAGERのADSの仕様変更でしょう。ソロランクではむしろ強化に近い変更かもしれないですが、練度の高いフルパ、すなわち競技シーンにおいてはキャッチできる投げものが実質半分になってしまっているため、大幅な弱体化と言えるのではないでしょうか(なんかADS餅つきなる小技もあるみたいですがあまり配信では見ないですね)。JAGERの弱体化により、ここ数シーズン猛威を振るっていた所謂「盾メタ」が弱くなっていることが想定されます。WAMAIのマグネット個数減少と盾没収の影響もあり、重要拠点に展開型シールドを置いて耐える守り方の有効性が薄くなっていそうです。そうなると、従来の環境で有用だった守り方が通用しなくなるパラダイムシフトが起こる可能性があります。とはいえ、新しい守り方を一から考えるのは大変骨が折れるため、その備えとして、トッププロの知見を参考にすることが有効かと考えます。

 JAGERはこれまで必須ピックであり、昨シーズンのAPAC Northにおいては驚異のピック率94.7%を記録しています。しかし裏を返せば、5.3%のラウンドではADSを使っていない守り方をしていた、ということになります。この5.3%のラウンドを見ることは、新シーズンの環境に適応できる新しい戦術の参考になるのではないでしょうか。そこで本稿では、昨シーズンのAPAC NorthでJAGERがピックされていなかったラウンドを防衛拠点ごとにまとめ、その際の作戦をざっくりまとめることで、今後のメタでどのような防衛戦術が生まれうるかを考えたいと思います。

2. 方法

 APAC North Stage2の10日間60試合のスタッツをまとめ、JAGERがピックされていないラウンド、防衛拠点を参照、そのラウンドについて配信アーカイブを見ました。

3. 結果と考察

 対象期間の総ラウンド数は643ラウンドでしたが、そのうちJAGERがピックされていなかったラウンドは34ラウンドでした。その内訳を下表に示します。

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 この表に記載されていない拠点ではJAGERのピック率が100%でした。すごいですね。ここからは、各マップ各拠点についてJAGERなしの守り方を見ていきましょう。途中で力尽きたので本稿ではオレゴン、ヴィラの5拠点を紹介します。

オレゴン

 まずは地下洗濯室守り。66回ピックされたうち、たったの1回しかJAGERが居ないラウンドはありませんでした。DAY6、Cloud9 vs EFYのラウンド4、EFYが見せた守りです。ちなみにこのラウンドは殲滅でEFYが防衛を成功させています。その際の防衛のオペレーターはMAESTRO、SMOKE、MUTE、CLASH、KAIDの5名。

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 バンカー盾はなし。CLASHでタワーからの進行を遅延させ、KAIDは備品室に陣取ってハッチと2枚補強を餅つきつつ、MUTEと2人でプラントポジにニトロを投げる役目。SMOKEは正面の進行を警戒しながら、通路の盾越しにプラントポジにガスグレネードを投げる役目。MAESTROは冷凍に位置して正面と冷凍の進行をイービルアイで監視。壊されたくないガジェットがイービルアイしかなく、それも前目に置かれているのでJAGERが必要ない、という判断でしょうか。これ以前のラウンドで遊撃主体の守り方をしていたため、対するCloud9がフラグ持ちを入れずにNOMADを入れていたこともあり、JAGERなしで籠って戦うことが出来ました。プラント阻止に重きを置いていたので、ニトロ持ちのMUTEが優先されたという側面もあるかもしれません。

 次に、1階会議ホール守りを見てみましょう。8回中2回、JAGERなし防衛が試みられましたが、2度ともDAY8のQconfirmによるものでした(vs Fnatic、ラウンド3,6)。どちらも防衛側が勝利しています。オペレーター構成はラウンド3がMUTE、SMOKE、MELUSI、CASTLE、LESION、ラウンド6がMUTE、SMOKE、MELUSI、CASTLE、VALKYRIEでした。ラウンド6の守り方を下に示します。

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  JAGERいないやつを考えてたはずなのに2階にいますね…CASTLEに読み替えてください。会議ホールの鉄板かもしれませんが、連絡通路を固く固く守っています。MELUSIとカバーのCASTLEに加えて、2枚補強にはシグナルディスラプター、その先にバンシー、さらに2枚の割れが見れる防弾カメラとガジェットたくさん。記念から共同寝室のバリケードもアーマーパネルです。食堂はMUTEが担当し、会議ホール中にVALKYRIE。SMOKEはタワーに入ってくるドローンを壊した後地下に展開したりしてました。攻撃側はとりあえず連絡通路をつぶさないといけないのですが、MELUSIがやたら撃ち合い強くて抑え込まれてました。CASTLEがやられるまでは見る方向が一つなので、Fnaticに不利な撃ち合いを強いていましたね。会議ホール中のオペレーターが投げものでつぶされるとこの拠点では致命傷だと思うのですが、その手前、2階の攻防で大勢を決する仕組みでした。

ヴィラ

 ヴィラで一番人気の飛行展示守り、イェーガーがいなかったのは60回中1回のみでした。DAY3に野良連合がEFYを相手にラウンド8で見せた守りです。EFYも設置まではこぎつけたのですが、最終的に解除で野良連合がラウンドを取っています。防衛のオペレーターはMELUSI、MUTE、ELA、KAID、SMOKE。

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 EFYが逆棟から来るという事前の情報があったのでしょうか、書斎側は書斎階段上のシールド裏にMELUSIを置くのみ(ELAのコンカッションも置いてたかも)で、残りは逆棟を向いたリソースの割き方になっていました。KAIDのエレクトロクロウも彫像の3枚と狩猟保管の1枚。KAIDが逆棟に控えめな遊撃をしていますが、他は現地近くで籠る形。ELAは相手の進行に合わせて1階のピアノに展開し、設置ポジを下からショットガンでつぶす立ち回りをしていました。盾2枚あったはずなんですがあと1枚はどこかわかんなかったです。

 次は1階ダイニング守りです。イェーガー欠席率は3/34。DAY3のEFY(vs 野良連合、ラウンド5)、DAY7のCAG(vs Fnatic、ラウンド3)、DAY8のCAG(vs Giants、ラウンド4)でした。防衛側の1勝2敗です。CAGの2ラウンドはほぼほぼオペレーター構成が同じなので、ラウンドを取っているDAY8の方を見てみましょう。オペレーター構成はLESION、VALKYRIE、ALIBI、BANDIT、PULSEでした。

 このラウンドはヴァルカメで飛び出したり、とにかく前目の勝負を徹底していました。籠らずにハードピークするなら確かにADSはいらないな、という感じ。2階で勝負がつき、Lunarmetal選手が屋上からヴィラの景色を満喫するラウンドとなりました。補強も余ってたんじゃないかな。

 最後に、逆にJAGERが全く使われなかった1階リビング守りです。どちらもTalonがGUTSを相手にDAY7に見せた守り方(ラウンド2,6)。防衛側の1勝1敗ですが、ここでは防衛側が勝利したラウンド2を見てみましょう。オペレーター構成はELA、MUTE、SMOKE、MELUSI、MOZZIEです。

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 2階に4枚割く守り方です。MELUSIは狩猟保管から床を開けてリビングN側の設置を止める役目。MUTEがそのカバー。狩猟保管の入りにはバンシーで万全。現地のSMOKEはトイレからのスニークインとN側設置を盾裏で対処。たぶんトイレにはコンカッションあるんじゃないかな。ELAとMOZZIEは逆棟から詰めてくる相手に対して引きながらの遊撃。生き残れば赤階段1階まで引いて、吹き抜け廊下を制しつつピアノ経由で書斎階段付近のエントリーも抑止する役割かなと。実際の試合ではELAが地下まで引いて、最終のプラントに入ろうとするGUTSの主導隊を裏から一網打尽にしてました。JAGERがいらない守り方というより、JAGERに割く枠がないという感じ。

4. ひとまずの結論

 JAGERなしでプロはどうやって守ってるの?ということで、APAC NorthからオレゴンとヴィラのJAGERなし戦術をざっと見ました。なんとなく、JAGERなし防衛のパターンとしては、

① そこまでの流れで相手が投げもの持ってこない&ニトロ増やしたい

② バンシーやイービルアイといった防弾ガジェットを多用しない

③ めっちゃ前目で勝負する

④ やりたいことをやるためにJAGERに割く枠がない

といった事情が透けて見えそうですね。防衛拠点によってはADSなくても何とかなるシチュエーションがあるというのは、今後の環境で防衛通したいときの福音ではないでしょうか。意外と勝率も悪くないですし(対策されそうですが)。

 ヴィラの彫像とか、天文守のこれから難しそうですし、JAGERなしで守れる実績のあるリビング守りが増えてくるといいな、とか思ったりします。カフェとか他のマップはまた後日まとめたいです。

世界大会に見る人気ボムサイトの推移①:海岸線、領事館、クラブハウス

1. 序論

 レインボーシックスシージというゲームで最もポピュラーなゲームモードは「爆弾」でしょう。マップ内の決められた場所に攻撃側はディフューザーを設置しようとし、防衛側はそれを防ごうとする。ボムがある場所はマップごとに(覚えてる限りではどこでも)4か所ずつ存在し、防衛側はその中から1か所を選んで拠点とする。当然、4か所の防衛しやすさは均一ではなく、守りやすい拠点、守りにくい拠点が存在します。結果、4か所が選ばれる割合は均等ではなく、守りやすい拠点はより多く選ばれるでしょう。

 その「守りやすさ」の順番ですが、これは常に一様ではないと考えられます。シーズンが変わればオペレーターの数も増えるし、ガジェットの使い勝手が変わることもあります。こと競技シーンにおいては、よく守られる防衛場所のセオリーは研究されますし、陳腐化していくことも考えられるでしょう。よって、環境と研究という2つの要素によって、「守りやすさ」は変容していきます。マップが出てきた当初は○○という拠点を1stピックにしていたけど、今では××を最初に選ぶよね、というケース、誰にとっても思い当たる節があるのではないでしょうか。

 現在、競技シーンにおいて用いられているマップは7つです。これらのマップでは、Y5S3まで、ボムサイトの人気はどのように推移してきたのでしょうか。本稿では、コンスタントに3か月に1回、つまりシーズンごとに行われてきた世界大会における、各マップのボムサイトピック状況をまとめ、その推移を見ていきます。書き始めたら結構な量になったので、2回に分けて書いていこうと思います。

 なお、一つ言い訳させていただくと、書いてる私が競技シーンを見始めたのは常滑のPLファイナルからでして、それ以前の環境はあまり分かっていません(常滑以後も正しく理解できてるか怪しいですが)。結果のところで、この時期はこんな環境だったのでは?とか偉そうに書いてますが、間違ってたり認識不足があればご教示いただけますと幸いです。

2. 方法

 データの出典はいつも通りSiege GGです。加えて、Liquipediaより、どのマップがいつから競技シーンに参入しているかを調べました。

liquipedia.net

 今回、分析対象としたマップは、現行の競技シーンで用いられている7マップ。本稿では、前半3マップについて触れます。

・海岸線

・領事館

・クラブハウス

・ヴィラ

・カフェ

・テーマパーク

オレゴン

  7マップそれぞれについて、世界大会でのピック回数、各ボムサイトのピック回数とその割合、防衛側勝率をまとめました。ここで、世界大会とは、旧プロリーグ制度下のPL Finals、Major大会、Invitational大会、現行プロリーグ制度下の4大地域(US、EU、BRAZIL、APAC North)の地域Major大会を指します。

 分析対象範囲は、7マップが現在用いられている形になってからです。すなわち、領事館は1地下が追加されてから、クラブハウス、カフェ、オレゴンはリワークが入ってから分析しています。

3. 結果

 それぞれのマップについて、ボムサイトのピック状況を見てみましょう。

海岸線

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  現在、最も古くから今ある形で競技シーンで用いられているマップです。今から遡ること3年半、2017年5月に開催されたPL Season4 Finalsで既にマッププールに入っていたわけですが、当初はあまりピックされず、世界大会においてその姿を見せるのは遅れること9か月、Invitational 2018になってからでした。防衛側勝率は一貫して50%近傍やや下回るといった感じで、生まれた時から攻撃マップと言えるでしょう。最近、防衛側勝率が上がっていますが、これは、昨今の盾メタが強すぎて全体的に防衛側が有利な傾向にあることの表れと考えられます。

 Inv2018当時、最も人気だった拠点は「ペントハウス/劇場」でした。次いで「キッチン/勝手口」、「ブルーバー/サンライズバー」、最も不人気な拠点が「フッカーラウンジ/ビリヤードルーム」。どのボムサイトも外から入って4秒で現地、みたいな構造になっているわけですが、その中でも外直が比較的少ない「ペントハウス/劇場」が好まれたのでしょう。なぜ「フッカーラウンジ/ビリヤードルーム」が不人気だったかはラウンドのサンプルが少なくてよくわからないですが、恐らく、古の時代に流行っていたらしいGLAZとYINGによるもくもくピカピカ大作戦と、フッカーラウンジの構造の相性が良すぎて、簡単にプラントまで行けてしまうのが理由ではないでしょうか。

 この頃の試合を観ていると、「ペントハウス/劇場」は劇場からペントハウスに向けてミラを貼り、VIPとペントハウスの間は3枚閉めきり、なんならショックワイヤーも置いちゃう、という形。攻撃側はロビーからの突き上げでブラックミラーを壊し、劇場階段から圧をかける一方で、VIP~ホールオブフェイムの敵を排除して進行、という感じに見えます。下に貼ったGrand Finalでは、当時ACOG持ちだったDOCをピックして積極的に前に出て撃ち合う姿も見られました。やはりこの頃から、拠点自体は脆く、遊撃で攻撃側を削ることが必須だったのでしょうか。

www.youtube.com

 当初こそ「ペントハウス/劇場」は1stピックとなる拠点でしたが、徐々にピック率を下げ、9か月後のSeason9 Finalsではついに一度もピックされなくなりました。代わりに「フッカーラウンジ/ビリヤードルーム」が1stの位置に上り詰めています。序論で、環境と研究によってボムサイトの人気が変わる、と言いましたが、海岸線の環境に関してはMAESTROの登場ともくもくピカピカ大作戦の弱体化が大きかったりするのでしょうか。イービルアイでフッカー見れるし、みたいな。あと、ソファからSMOKEの壁越しガスグレネードでボム裏のプラント止められるのっていつ見つかったんでしょうかね。それにフッカーのボムの強さって大きく依存してる気がします。

 最近では、「フッカーラウンジ/ビリヤードルーム」と「キッチン/勝手口」のピック率が同程度で、どちらかが1stピックという傾向になっています。「キッチン/勝手口」は全期間安定して高いピック率を維持していますが、拠点内がほぼほぼ全部突き下げできて居場所ない、という意味では、他の拠点とどこが違うのかな?と思ったりもします。防衛側が広がりやすく、攻撃側の取るべき手順が他の拠点に比べて多いのかしら。他の拠点は平面で完結する場合も多いように思うけど、キッチン勝手口はラッシュ以外ならほぼほぼ上取る手順入りますもんね。

 ところで、ここしばらく「ペントハウス/劇場」のピック率は低位ですが、実は防衛側の勝率が高い拠点でもあり、初見殺しとして有効に機能していることが分かります。私の記憶に新しいのはAPAC Northの出場権を賭けた試合におけるFAVの守りで、CLASHとDOCでごりごりにDJブースと勝負していた印象が強いです。実装当初から変わらず、やっぱりこの拠点は早めの撃ち合いを主体にするしかなく、再現性に乏しいのかもしれないですね。

領事館

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  1地下の追加が2018年の夏ごろにあったので集計期間は海岸線より短いですが、マップ自体は最も古くから存在している領事館を見てみましょう。最近、特に2階の防衛を指して「もう守れない」と言われている領事館ですが、Major Raleighくらいまでは防衛側の方がラウンドを多く取得するマップでした。その後、攻撃側で領事館の環境を一新させうるオペ追加や変更って無い気がするので、研究が飽和した結果の「もう守れない」マップなのかもしれないですね。

 1地下追加当初のPL8 Finalsでは2階と地下が同程度守られていましたが、その後半年くらいは2階が1stピックとなることが多かったようです。下に貼ったPL9 finalsのsemi finalでは防衛スタートのEmpireがやはり2階を1stピックとしていますが、それに対するFnaticは初手管理事務攻めの選択肢を取っていました。今でこそ、非常階段とCEOオフィスで完結するような攻めが主流ですが、当時は攻撃は管理事務から侵攻し、防衛は会議室とか長机のラインで頑張る、という構図が主流だったのでしょうか。www.youtube.com

 PL8 finals、Inv2019、PL9 Finalsの2階における防衛側勝率は、それぞれ50%、61%、20%となっていました。これ以降は50%を割っており、領事館が守りにくくなった潮流は、まず最も人気であった2階が研究の深化によって守れなくなったことから始まったのかもしれません。

 2階が守れなくなり、最近人気なのが地下守りです。実は地下守り、集計期間中6/8が防衛側勝率50%超であり、「もう守れない」領事館における良心となっています。地下と言えば、攻撃側は上階をきれいにした後、ガレージを割って、どこでプラントしてるでしょうかじゃんけんを仕掛けるという印象がありますが、その傾向はずっと変わってないみたいですね。防衛側としては、最後のじゃんけんに勝つ確率を上げるためにイービルアイやバンシー置いたりしますが、今シーズンからそういった置物が壊しやすくなるはずなので、もしかしたら領事館の良心が崩壊するかもですね。いっそう上階での遊撃が重要になるのかも。

 領事館に肝いりで登場した1地下ですが、1年半くらい、ピック率1桁時代を経験します。しかし、誰が最初に始めたのか知りませんが、去年の11月くらいからピック率が10%を超えるようになってきて、最近では2階を放棄して1地下を選ぶチームが珍しくないくらいになってきたように思います。1地下の守り方も第2段階に入ってきているような気がしていて、地下から1階をニトロで飛ばすだけでなく、終盤まで1階に広く展開するチームがちょくちょくいるようないないような。

クラブハウス

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 こちらも古参マップ、クラブハウスです。マエストロとアリバイが登場したシーズンにリワークされたのかな?そこからカウントしています。基本的に防衛マップと呼んで差し支えないマップであると思います。一つの外れ値的PLs9 Finalsを除けば、防衛側勝率が50%超えてますし。

 数字だけ見るとずーっと地下が1stピックですが、ジムベッドと監視金庫のピック率も高く、チームによって1stピックを自由に選べる、良マップと言えるでしょう(バー倉庫から目をそらしながら)。しかしその中でも、拠点ごとに防衛側勝率を見ていくと、最も安定しているのが地下です。ここ1年間、一度も防衛側勝率が60%を割っていません。1年前、というとSSG守りが開発されたのがその時期かもう少し前でしょうか。籠っても強い拠点ですが、ドローンメタを敷いてマップ全体を広く使う、というオプションが出来たことでさらに守りやすい拠点となったみたいですね。

  バー倉庫のピック率が地を這っていますが、たまにピックされても防衛側が負けるケースの方が多く、もしかすると競技シーン中最弱の拠点かもしれません。一応、面白かった初見殺しバー倉庫守りの解説動画だけ載せておきます。

www.youtube.com

4. 中締め

 大会マップ7つのうち、古くから用いられている3マップを取り上げて紹介しました。研究が進んでいるからでしょうか、海岸線と領事館の古参組はいい加減守るのが難しい状態に来ていることが改めて確認されましたね。クラブハウスはリワークが入ったこともあって、まだまだ現役で戦えそう。

 残りの4マップについても、データはすでにとってあるので気が向いたら書こうと思います。4000字を越えてくると途端にやる気がなくなってしまいますね。

 冒頭でも言いましたが、マップの歴史について大いに私の見解が間違っていることが予想されるので、「ここはこうじゃね?」というご意見をたくさんいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

トップリーグの40チームをカテゴリー分けしてみよう:2020 Stage1,Stage2の比較

1. 序論

 3か月くらい前、トップリーグのStage1が終わったくらいの頃にこんな記事を書きました。

vongole-domingo.hatenablog.com

 トップリーグに所属している40チームについて、プラント指向と選手のキルのばらつきからカテゴリー分けを試みた記事です。いろいろ分け方とか雑だったんですが、それなりに各チームの特徴を捉えることが出来たんじゃないかなと自負しています。

 Stage1では上記の記事のように40チームが分類できたわけですが、Stage2が終わって、各チームの特徴に変化は見られたんでしょうか?シージはシーズンごとのアップデートでメタが大きく変わります。今シーズンについて言えば、最も大きな変化はACEとMELUSIの参戦でしょう。両オペレーターとも強力で、下の図からもわかるように、かなり多くプロシーンでもピックされていました。

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 特に、MELUSIのバンシーソニックディフェンスは防弾系のガジェットであったため、攻撃側からすると破壊しなければいけないガジェットが多すぎて拠点に攻め込む時間が足りない問題、通称「20秒メタ」を大きく進行させてしまったように見受けられます。ほかにも、PING2.0による一方的な情報取得の可能性、スコープの一新による調整など、環境変化が随所で見られ、今シーズンは近年まれにみるメタの変化だったようです。

 メタの変化に伴い、プラント指向やキルのばらつきには変化があったのでしょうか?言い換えれば、チームカラー的なものにメタの変化は影響するのでしょうか?本稿では、上記の記事と同様のデータ収集、分析を行い、Stage1とStage2の比較を行います。

2. 方法

 

 SiegeGGより、2020 Stage1およびStage2におけるトップリーグ40チームのキル数、プラント数、ラウンド数、攻撃ラウンド数を参照しました。

 各選手のキル数をラウンド数で割ったキル/ラウンドを算出し、チーム内でその標準偏差を計算しました。この、チーム内のキル/ラウンドの標準偏差をX軸に取ります。各チームのプラント数を攻撃ラウンド数で割った、プラント/攻撃ラウンドを算出し、これをY軸に取ります。こうしてXY平面の散布図を作り、各チームの数値をプロットしました。

3. 結果

  40チームのStage1およびStage2における散布図は下記の通りです。

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 これだけ見せられても、わかるのはStage2のGUTSのプラント指向がすごすぎるのと、同じくStage2のRogueが全然プラントまでこぎつけられていないということぐらいですね。とりあえず、Stage間で全体的な傾向の変化が見られたかどうか、一つの散布図にまとめてStage1とStage2の数値を載せて検証してみましょう。

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 ・・・どうでしょうか?

 青がStage1、オレンジがStage2の各チームの数値を示しています。こうしてみると、同じエリアに青とオレンジが混在しており、Stage間での変化は存在しないように見えます。

 全体的な傾向としては大きな変化はないようですが、チームごと、地域ごとに見てみるとまた違ったりするかもしれません。そこで今度は、地域ごとにStage間の比較をしてみましょう。

 まずはEU

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 ちょっと見にくくて恐縮ですが、各チームがどこに分布しているか、チーム名とStageを併記しています。こうしてみると、Chaos(Stage1)、Secret(Stage1)といった極端な例を除いて、EUでは基本的にプラント指向が低下していることが見て取れます。BDS、G2、VPといったStage1で高いプラント指向を示していたチームでその傾向が顕著です。Stage2ではStage1と比較して、プラントより殲滅に各チームは寄っていたのでしょうか。

 また、各選手のキルの偏り、すなわち左右の分布を見てみましょう。BDSはわかりやすいですね、Stage2におけるShaiikoの爆発が寄与して、Stage1から見るとStage2のキルのばらつきは相当大きいです。TempraやG2はそれほど左右の位置に変化はなく、NaViやVPは大きく右に動いています。何となく、Stage1からStage2にかけて順位を下げたチームが変化なしで、順位を上げたチームはキルのばらつきが大きくなっているようです。エースプレイヤーの復調、といった要素が垣間見えます。

 次に、USを見てみます。

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 こちらは、EUと異なり、Stage1とStage2で上下の位置、すなわちプラント指向には変化があまりありません。一方、左右の位置はくっきり分かれており、Stage1からStage2にかけて、Tempoを除く各チームでキルのばらつきが小さくなっています。キルのばらつきが小さくなっている、ということは何を示唆しているのでしょうか。素人考えですが、このシーズン間、USにおいては薄く広く拠点を包囲するスタイルから、固まって一点突破するスタイルに多少のシフトがあったのではないでしょうか。個人技での突破からカバーを重視する戦術に切り替わった結果、各人のキルのばらつきが小さくなったのかも。

 ブラジルはどうでしょうか。

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 ごちゃごちゃしていて恐縮ですが、裏を返せば、各チームの傾向が近い地域であるとも言えます。Stage間の左右、上下の位置関係の変化に大きな傾向はなさそう・・・。残念ながら、私の力量ではここから何かを読み取るのは難しかったです。

 最後に、我らがAPAC Northを見てみましょう。

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 GUTSが図抜けたプラント指向であることもありますが、4地域の中で最も各チームの個性にばらつきがあるリーグと言えそうです。散布図全体にプロットが広がっているように見えます。

 ただ、ブラジル同様、ここでもStage間の大きな変化の傾向はなさそうです。チームごとに散布図上での動きは大きいのですが、リーグ全体で動きの傾向が一致しているわけではないというか。Majorに出場する上位チームで言えば、GUTSとCAGはプラント指向を高めてメタに対応しているようですし、GiantsとC9はEUの各チームと同様に逆に殲滅指向を高めています。FAVとXavierはプラント指向に大きな変化はないですが、キルのばらつきが大きくなっています。これはNo2選手、Onigiri選手の爆発に起因していそう。この2チームは選手のレベルアップや順応によって好調をキープしたと言えそうです。

4. 結論

 Stage1からStage2にかけて、大きなメタの変化がありましたが、それにどのように順応したかは各地域によって異なることが示唆されました。

 EUでは各チームが殲滅に寄るようになり、USではカバー重視の戦術への転換が示唆されました。ブラジルは変わらず、APAC Northでは各チームの順応の仕方に差があったようです。コロナ禍で各地域が分断され、ガラパゴス的な成長が生じているんじゃないかな、とぼんやり思っていましたが、その傾向がおぼろげながら見られたんじゃないでしょうか。

なんかまとまりのない文章になってしまいました。あんまり大したこと言えてないですが、ご容赦ください。