トップリーグの40チームをカテゴリー分けしてみよう
(2020年9月8日追記) プラント/ラウンドからプラント/攻撃ラウンドに指標を変更
1. 序論
プロリーグを観ていると「ソルジャーシステム」だったり 「組織的」だったり、キャスターの方々がプロチームの特色をざっくり解説している場面がよくある。それを聞いていると、どうやらシージのチームカラーというのは、キルの稼ぎ方+セットプレーに寄るかどうかで分類できそうだ。キルが特定の選手に偏るチームなのか?組織的にカバーを重ねて満遍なくキルするチームなのか?はたまた、殲滅に寄るチームか?プラントをめざしたセットプレーに長けたチームなのか?この2軸でチームを分類することができそうだ。すなわち、「ソルジャーシステム⇔カバー重視」の軸と「殲滅⇔プラント」の軸をXY軸に取り、そこにチームをプロットすることで定量的にチームの特徴を捉えることが可能なのでは?と考えた。
そこで本稿では、4大プロリーグに所属する40チームについて、キルの偏りとプラントの頻出度を指標に取り、「ソルジャー・プラント」、「ソルジャー・殲滅」、「カバー・プラント」、「カバー・殲滅」の4つのカテゴリーに分類してみた。お気に入りのチームの傾向を把握するとともに、「このチームはこのチームと似ているんだ!」みたいな感じで普段観ないリーグの試合を見るときの参考にしていただければ幸いである。
2. 方法
SiegeGGより、今シーズン(2020 STAGE1)の40チームのキル数、プラント数、ラウンド数、攻撃ラウンド数を参照した。
「ソルジャーシステム⇔カバー重視」の軸を作成するため、各選手のキル数をラウンド数で割ったキル/ラウンドを算出し、チーム内でその標準偏差を計算した。この、チーム内のキル/ラウンドの標準偏差をX軸に取った。なお、標準偏差の平均値が0.1229となったため、これを閾値とし、0.1229より標準偏差が大きいチームを「ソルジャーシステム」、小さいチームを「カバー重視」とした。
「殲滅⇔プラント」の軸を作成するため、各チームのプラント数を攻撃ラウンド数で割ったプラント/攻撃ラウンドを算出し、これをY軸に取った。なお、この平均値は0.2745となったため、これを閾値とし、0.2745よりプラント/ラウンドが大きいチームを「プラント重視」、小さいチームを「殲滅重視」とした。
以上で示した「ソルジャーシステム⇔カバー重視」と「殲滅⇔プラント」のXY平面は、下図のように解釈できる。第1象限の「ソルジャー・プラント群」はエースが多くのキルを稼ぎ、プラントに寄ることが多いチームである。第2象限の「カバー・プラント群」は、突出したキル数の選手はおらず、満遍なく全選手がキルを取るタイプで、かつプラントが多いチームである。第3象限の「カバー・殲滅群」はカバーを重ねてキルを稼ぐタイプのチームで、攻撃においては殲滅に寄ることが多い。第4象限の「ソルジャー・殲滅群」はエースがキルを稼ぎ、チームとしては殲滅を重視するチームである。
このXY平面に40チームをプロットする。プロットのためのデータは下表の通りである。
Region | Team | キル/ラウンド標準偏差 | プラント/ラウンド |
---|---|---|---|
APAC | Giants | 0.2117 | 0.2400 |
APAC | Cloud9 | 0.1463 | 0.2712 |
APAC | GUTS | 0.0820 | 0.3651 |
APAC | Xavier | 0.1040 | 0.2742 |
APAC | FAV | 0.1101 | 0.2623 |
APAC | CAG | 0.0697 | 0.2982 |
APAC | Fnatic | 0.0880 | 0.3333 |
APAC | Qconfirm | 0.1099 | 0.3600 |
APAC | TALON | 0.1518 | 0.2542 |
APAC | Electrify | 0.0973 | 0.2034 |
APAC | Nora | 0.0727 | 0.2778 |
APAC | SCARZ | 0.1079 | 0.1930 |
US | DarkZero | 0.1650 | 0.3396 |
US | SSG | 0.1500 | 0.3731 |
US | Oxygen | 0.1427 | 0.2727 |
US | TSM | 0.1451 | 0.2299 |
US | Soniqs | 0.1774 | 0.2143 |
US | Tempo | 0.0939 | 0.1667 |
US | eUnited | 0.0827 | 0.2692 |
US | Disrupt | 0.1483 | 0.2609 |
EU | G2 | 0.0864 | 0.3878 |
EU | Chaos | 0.1420 | 0.1296 |
EU | Vitality | 0.0972 | 0.2917 |
EU | Rogue | 0.1237 | 0.2895 |
EU | Secret | 0.1748 | 0.0943 |
EU | Empire | 0.1114 | 0.3333 |
EU | NaVi | 0.1908 | 0.3261 |
EU | VP | 0.1426 | 0.3958 |
EU | Tempra | 0.0615 | 0.3400 |
EU | BDS | 0.0427 | 0.4000 |
LATAM | Faze | 0.0894 | 0.3400 |
LATAM | NIP | 0.1475 | 0.2697 |
LATAM | Liquid | 0.2183 | 0.2800 |
LATAM | INTZ | 0.1376 | 0.2020 |
LATAM | BD | 0.0998 | 0.2360 |
LATAM | Santos | 0.1374 | 0.2333 |
LATAM | MIBR | 0.0813 | 0.2626 |
LATAM | FURIA | 0.1244 | 0.2391 |
LATAM | oNe | 0.0571 | 0.2235 |
LATAM | W7M | 0.1918 | 0.2474 |
3. 結果
40チームをXY平面にプロットしたものが下図である。それぞれの象限ごとに見ていこう。
まず、第1象限、ソルジャー・プラント群には、SSG、DarkZero、VP、NaVi、Rogue、Liquidの6チームが入った。この象限に入るチームは、キルを取る役割の選手が存在し、プラント数が多いことから、チーム内のロールがしっかり分けられているチームであることが推察される。SSGにおけるRampyとCanadian、DarkZeroにおけるHyperとHotanColdが例として挙げられるだろう。アタッカーがファーストブラッドを獲得して人数有利を得たのち、有利をキープしつつプラントでさらにそれを決定的なものにする、という試合展開が想像されるチーム群だ。
次に、第2象限、カバー・プラント群を見ていこう。この象限には、BDS、Tempra、G2、Vitality、Empire、Faze、GUTS、CAG、Nora、Fnatic、Qconfirmの11チームが入った。チーム内でキル数のバランスがよく、攻撃においてはプラントを目指す、セットプレーを得意としたチームがここに入ると考えられる。言い換えればチーム全体で一丸となった、チームプレーに長けたチームであると言えるだろう。個人的に、BDSがこの象限の、しかもかなり平面上で左に位置するチームとなったのは意外であった。Shaiikoという最高の男がいる一方で、今シーズンレーティングトップとなったBriDを筆頭にリーグ屈指の殺し屋がそろったチームであり、高いレベルでまとまったチームとなっていると考えられる。
第3象限、カバー・殲滅群においてはFAV、Xavier、Electrify、SCARZ、Tempo、eUnited、oNe、MiBR、BDの9チームが入った。この象限には、カバーの応酬によって一気に試合が動く、見ていて楽しいチームが集まっているといえるだろう。リーグ屈指の殺し屋であるAfroを有するFAVがカバー群にいることは直感的に意外だが、他4人のキル数が同程度にまとまっており、やはりチームでキルを取るタイプと言えるのではないか。
最後に、第4象限、ソルジャー・殲滅群には残りの14チームが入った。この象限のチーム群はなんとなく荒っぽい印象を受けるかもしれない。エースが無双し、それに続く形で各人が相手チームを殲滅していく、銃撃戦してる感の強いチームなのかも。APACで言えばGiants、Cloud9、TALONが入っているが、ふり~だ氏の言葉を借りるなら、「ソルジャーシステム」を積極的に採用しているチームであり、HysteRiX、SyAIL、Tomorrowといったつよつよな男たちが相手の戦意を奪い去るキルを重ねているイメージが濃い。
散布図全体を俯瞰すると、リージョンによって象限に偏りがあることにも気づくだろう。APACを例に挙げると、第1象限に0チーム、第2象限に5チーム、第3象限に4チーム、第4象限に3チームと分布している。これは、SSGやDarkZeroのような、役割意識のはっきりしたチームがAPACには存在していないことを示唆している。また、APACの両雄ともいえるGiantsとCloud9が多数派の第2象限ではなく、第4象限に入っている点も着目すべきかもしれない。APACの多数派(環境と言い換えてもいいかもしれない)はカバー重視であるのに対し、APACを制したチームはゴリゴリの個人技特化チームであった。APACで勝ち切るためには、どこかで割り切ったハードピーク気味の仕掛けをする選手の存在が不可欠なのかもしれない。一方で、EUリージョンの上位は第1象限、第2象限に集中していることから、EUにおいては別の原理が働いている可能性が高い。このようなリージョンごとの色合いの違いも、レインボーシックスシージの競技シーンの醍醐味だと思う。
4. 結論
プラントとキルの分布を軸に、競技シーンで活躍する40チームをカテゴリー分けした。意外ときれいに分かれたようにも見えるし、これだけでは説明しきれない各チームの強みや魅力も当然あるだろう。各象限のチームの成績と見比べたり、シーズンごとに定点観測を行うとより興味深い結果が出るかもしれない。なんにせよ、推しのチームと似たチームを他リージョンで見つける一助となれば幸いである。
補遺:リージョンごとの散布図