Six Invitational 2021に見る「差がつくマップ」

1. 序論

 Six Invitational 2021が終わって20日くらい過ぎましたね。たぶん僕は全日程ライブで見たんですけど、最近ようやく朝8時に起きれるようになりました。歳を取ると生活リズムを整え直すのが難しくなりますね。

 生活リズムを整えるのが困難だった理由の一つに、連日の熱戦で終了時刻がかなり後ろ倒しになってたことが挙げられると思います。終わったら日が昇っているのは当たり前、カーテンを開けると出社するサラリーマンを眼下に見ることができて自己嫌悪に襲われました。要するに、どの試合も実力が伯仲しているからか、一方的な展開が少なかったんですよね。

 「一方的な展開が少ない」というのは良いことではあるのですが、一方で、マッププールが1年超変わっていないことによる研究レベルの飽和、という現象の表れとも見て取れます。今大会、主観になりますが、昨年のSSGの銀行やクラブハウスのような「無敵のマップ」を持つチームが思い浮かびません。お互いにマップ戦略で差をつけることが難しくなっているのではないでしょうか。マッププールの刷新が見たいです。

 そんな思いを抱きながら、とはいえこのままだと「僕の感想」でしかないので、データを見てみようと思います。本稿では、Six Invitational 2021における全試合の防衛ラウンド取得率を参照し、各マップが「差がつくマップ」かどうかを考えていきたいと思います。ちなみに、今年の1月に同じような取り組みをしているのでよかったらそちらも併せてご覧ください。

vongole-domingo.hatenablog.com

2. 方法

 SiegeGGを参照し、Six Invitational 2021の全試合について各チームの防衛ラウンド取得率をマップごとに数え上げました。

Six Invitational 2021 — SiegeGG

 プレイされた総マップ数は127。7マップそれぞれについて取得率のヒストグラムを作成し、そのばらつきを見ました。発想としては、取得率にばらつきがあればそのマップは「差を作れるマップ」であり、取得率がまとまっていれば「差が少ないマップ」となるかなあと思います。

 本稿では防衛側のラウンド取得率を見ているため、「このマップの攻撃が上手いチーム」みたいな攻撃側の議論はできません。また、ラウンドの結果のみを見ているため、その過程を評価できない点もご留意ください。

3. 結果と考察

クラブハウス(21試合, 42チーム)

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  一番人気のクラブハウスです。防衛ラウンド取得率は試合によって様々で、かなりチームの練度やあるいはBANによって「差がつくマップ」であることが分かります。防衛ラウンド取得率の平均値は60%。ボムごとの取得パーセンテージも大きく変わっていないのですが、その中身を見てみるとチームによってばらつきが大きそうだな―という印象。実際、7-0の試合が今大会中だけでも4回発生しており(SSG、OXG、Empire、Liquidの勝利)、チームごとの差が浮き彫りになってしまうのかも。オペレーターBANに着目すると、両チームが防衛を7割以上取り合う試合では必ずTHATCHERがBANされていました。あまり回数が多くなかったのでたまたまかもですが、クラブハウスならではの、割職4種類+THATCHERのどれをBANするといいのか問題のヒントになるかもしれません。

オレゴン(21試合, 42チーム)

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 見ての通り、「防衛を取り合うマップ」でしたね。防衛ラウンド取得率の平均値は56%と、そこまで防衛に寄っているようには見えませんが、ヒストグラムを見る限りでは4-2で折り返すことが勝つためにはマストな印象を受けます。ご存知の通り、2階や地下のボムに比べて1階が貧弱ですから、前者は必ず取りたいイメージ。相対した両チームが攻撃を取り合う形の試合は2試合ありましたが、防衛BANでの共通点はありませんでした。攻撃の方ではASH、BUCKをそれぞれの試合でBANしていたので、立体的な攻めが難しくなっていたはずですがなんか通してましたね。

カフェ(20試合, 40チーム)

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  ヒストグラムが真ん中に寄っており、「大きな差がつかないマップ」と言えるでしょう。防衛ラウンド取得率の平均値は57%と、オレゴンとそこまで変わらないのですが、中身の展開、ラウンドのばらつきは違っていそうですね。1月の段階と比べて攻撃側に取得率が寄り始めており、「防衛マップ・カフェ」が崩れつつあります。読書室の人気が落ちていることも傾向としてはありますね。1階がよく守られるようになりました。一方で、感想になってしまいますが、LiquidがMIBRを封殺した後NiPに封殺されたり、昨年のインビで圧倒的だったTSMをGiantsが潰したり、番狂わせがよく起きるイメージもあります。

領事館(19試合, 38チーム)

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  1月からかなり傾向が変わって、なぜか防衛が取れてるマップです。防衛ラウンド取得率の平均値も58%。とはいえ、かなりヒストグラムの並びがなだらかなので、「チームによって差が大きいマップ」と言えるでしょう。地域別の防衛ラウンド取得率を見ると、APAC60%、BR57%、NA61%、EU50%といった感じでEUが苦戦しています。なんででしょう、マップの構造的に一方向から押しまくる戦術が有効で、EU的な多角的な攻めがあまり意味をなさないのでしょうか。

海岸線(17試合, 34チーム)

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  ここも、なんか守れるようになったマップの一つです。防衛ラウンド取得率の平均値は53%。海岸線史上、一番守れてる時期ではないでしょうか。籠るタイプの防衛が強い環境から、前で当たらざるを得ない環境になったことで、もともとエントリーで戦ってた海岸線の防衛戦術が成熟したのでしょうか。自分でも何を言ってるか分かりません。このマップはAPACの防衛ラウンド取得率が他地域よりも如実に低いマップなので、そこは一つAPAC全体の課題かもしれませんね。

山荘(16試合, 32チーム)

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  新マップとして颯爽と登場し、「やっぱり攻撃有利じゃないか!」と化けの皮をはがされた山荘です。防衛ラウンド取得率の平均値は46%と7マップ中最低。一番多いパターンは防衛で3-3って感じがしますが、他のマップのヒストグラムと比べるとやはり攻撃側にラウンドが寄ってますね。「あまり差がつかないが攻撃で取っておきたいマップ」と言えるのでは。地域として防衛ラウンド取得率が50%を超えたのはBRのみ。結果としてブラジルフィーバーとなった大会を後付けで振り返るなら、山荘を制したBRがそのまま大会を制したともいえるのかもかも。

ヴィラ(13試合, 26チーム)

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  最後にヴィラです。やばい分布の形をしていて、「ゴリゴリの防衛マップ」と化していました。防衛ラウンド取得率の平均値は63%、防衛で4-2取るのがデフォ。特にキッチンダイニングは68%と全拠点中最強の防衛ラウンド取得率を誇っています。ニトロセル持ちを持って来やすい環境であることは事実だと思うので、攻撃側が立体的に組み立てにくい状態になっていたんでしょうか。個人的に気になっていたのが飛行展示室の守り方で、APACやRJLでスタンダードな赤階守りをあまり見なかったような…?どっちかというと南階段が主戦場になっていたような気がします。 この偏り方と不人気さはテーマパークで見たことがあるので、次に消えるマップはもしかして…

4. 結言

 ざっくり7マップについて「差がつくマップ」かどうかを見てきました。当初の予想から外れて、ヴィラ以外は「差がつくマップ」が多かったように思います。けっこう健全な環境と言えるのではないでしょうか。シーズン3には各マップにマイナーアップデートが入るようですから、マッププールのマンネリ感もそこで解消されるでしょうし、これからも競技シーンでワクワクする日々が続きそうです。願わくば8月のMajorもオフラインで集まれますように。