Six Invitational 2021に見る「差がつくマップ」

1. 序論

 Six Invitational 2021が終わって20日くらい過ぎましたね。たぶん僕は全日程ライブで見たんですけど、最近ようやく朝8時に起きれるようになりました。歳を取ると生活リズムを整え直すのが難しくなりますね。

 生活リズムを整えるのが困難だった理由の一つに、連日の熱戦で終了時刻がかなり後ろ倒しになってたことが挙げられると思います。終わったら日が昇っているのは当たり前、カーテンを開けると出社するサラリーマンを眼下に見ることができて自己嫌悪に襲われました。要するに、どの試合も実力が伯仲しているからか、一方的な展開が少なかったんですよね。

 「一方的な展開が少ない」というのは良いことではあるのですが、一方で、マッププールが1年超変わっていないことによる研究レベルの飽和、という現象の表れとも見て取れます。今大会、主観になりますが、昨年のSSGの銀行やクラブハウスのような「無敵のマップ」を持つチームが思い浮かびません。お互いにマップ戦略で差をつけることが難しくなっているのではないでしょうか。マッププールの刷新が見たいです。

 そんな思いを抱きながら、とはいえこのままだと「僕の感想」でしかないので、データを見てみようと思います。本稿では、Six Invitational 2021における全試合の防衛ラウンド取得率を参照し、各マップが「差がつくマップ」かどうかを考えていきたいと思います。ちなみに、今年の1月に同じような取り組みをしているのでよかったらそちらも併せてご覧ください。

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2. 方法

 SiegeGGを参照し、Six Invitational 2021の全試合について各チームの防衛ラウンド取得率をマップごとに数え上げました。

Six Invitational 2021 — SiegeGG

 プレイされた総マップ数は127。7マップそれぞれについて取得率のヒストグラムを作成し、そのばらつきを見ました。発想としては、取得率にばらつきがあればそのマップは「差を作れるマップ」であり、取得率がまとまっていれば「差が少ないマップ」となるかなあと思います。

 本稿では防衛側のラウンド取得率を見ているため、「このマップの攻撃が上手いチーム」みたいな攻撃側の議論はできません。また、ラウンドの結果のみを見ているため、その過程を評価できない点もご留意ください。

3. 結果と考察

クラブハウス(21試合, 42チーム)

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  一番人気のクラブハウスです。防衛ラウンド取得率は試合によって様々で、かなりチームの練度やあるいはBANによって「差がつくマップ」であることが分かります。防衛ラウンド取得率の平均値は60%。ボムごとの取得パーセンテージも大きく変わっていないのですが、その中身を見てみるとチームによってばらつきが大きそうだな―という印象。実際、7-0の試合が今大会中だけでも4回発生しており(SSG、OXG、Empire、Liquidの勝利)、チームごとの差が浮き彫りになってしまうのかも。オペレーターBANに着目すると、両チームが防衛を7割以上取り合う試合では必ずTHATCHERがBANされていました。あまり回数が多くなかったのでたまたまかもですが、クラブハウスならではの、割職4種類+THATCHERのどれをBANするといいのか問題のヒントになるかもしれません。

オレゴン(21試合, 42チーム)

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 見ての通り、「防衛を取り合うマップ」でしたね。防衛ラウンド取得率の平均値は56%と、そこまで防衛に寄っているようには見えませんが、ヒストグラムを見る限りでは4-2で折り返すことが勝つためにはマストな印象を受けます。ご存知の通り、2階や地下のボムに比べて1階が貧弱ですから、前者は必ず取りたいイメージ。相対した両チームが攻撃を取り合う形の試合は2試合ありましたが、防衛BANでの共通点はありませんでした。攻撃の方ではASH、BUCKをそれぞれの試合でBANしていたので、立体的な攻めが難しくなっていたはずですがなんか通してましたね。

カフェ(20試合, 40チーム)

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  ヒストグラムが真ん中に寄っており、「大きな差がつかないマップ」と言えるでしょう。防衛ラウンド取得率の平均値は57%と、オレゴンとそこまで変わらないのですが、中身の展開、ラウンドのばらつきは違っていそうですね。1月の段階と比べて攻撃側に取得率が寄り始めており、「防衛マップ・カフェ」が崩れつつあります。読書室の人気が落ちていることも傾向としてはありますね。1階がよく守られるようになりました。一方で、感想になってしまいますが、LiquidがMIBRを封殺した後NiPに封殺されたり、昨年のインビで圧倒的だったTSMをGiantsが潰したり、番狂わせがよく起きるイメージもあります。

領事館(19試合, 38チーム)

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  1月からかなり傾向が変わって、なぜか防衛が取れてるマップです。防衛ラウンド取得率の平均値も58%。とはいえ、かなりヒストグラムの並びがなだらかなので、「チームによって差が大きいマップ」と言えるでしょう。地域別の防衛ラウンド取得率を見ると、APAC60%、BR57%、NA61%、EU50%といった感じでEUが苦戦しています。なんででしょう、マップの構造的に一方向から押しまくる戦術が有効で、EU的な多角的な攻めがあまり意味をなさないのでしょうか。

海岸線(17試合, 34チーム)

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  ここも、なんか守れるようになったマップの一つです。防衛ラウンド取得率の平均値は53%。海岸線史上、一番守れてる時期ではないでしょうか。籠るタイプの防衛が強い環境から、前で当たらざるを得ない環境になったことで、もともとエントリーで戦ってた海岸線の防衛戦術が成熟したのでしょうか。自分でも何を言ってるか分かりません。このマップはAPACの防衛ラウンド取得率が他地域よりも如実に低いマップなので、そこは一つAPAC全体の課題かもしれませんね。

山荘(16試合, 32チーム)

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  新マップとして颯爽と登場し、「やっぱり攻撃有利じゃないか!」と化けの皮をはがされた山荘です。防衛ラウンド取得率の平均値は46%と7マップ中最低。一番多いパターンは防衛で3-3って感じがしますが、他のマップのヒストグラムと比べるとやはり攻撃側にラウンドが寄ってますね。「あまり差がつかないが攻撃で取っておきたいマップ」と言えるのでは。地域として防衛ラウンド取得率が50%を超えたのはBRのみ。結果としてブラジルフィーバーとなった大会を後付けで振り返るなら、山荘を制したBRがそのまま大会を制したともいえるのかもかも。

ヴィラ(13試合, 26チーム)

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  最後にヴィラです。やばい分布の形をしていて、「ゴリゴリの防衛マップ」と化していました。防衛ラウンド取得率の平均値は63%、防衛で4-2取るのがデフォ。特にキッチンダイニングは68%と全拠点中最強の防衛ラウンド取得率を誇っています。ニトロセル持ちを持って来やすい環境であることは事実だと思うので、攻撃側が立体的に組み立てにくい状態になっていたんでしょうか。個人的に気になっていたのが飛行展示室の守り方で、APACやRJLでスタンダードな赤階守りをあまり見なかったような…?どっちかというと南階段が主戦場になっていたような気がします。 この偏り方と不人気さはテーマパークで見たことがあるので、次に消えるマップはもしかして…

4. 結言

 ざっくり7マップについて「差がつくマップ」かどうかを見てきました。当初の予想から外れて、ヴィラ以外は「差がつくマップ」が多かったように思います。けっこう健全な環境と言えるのではないでしょうか。シーズン3には各マップにマイナーアップデートが入るようですから、マッププールのマンネリ感もそこで解消されるでしょうし、これからも競技シーンでワクワクする日々が続きそうです。願わくば8月のMajorもオフラインで集まれますように。

SI2021 May Edition直前、知っておきたい3つのTips

1. はじめに

  いよいよ明後日ですね、Six Invitational 2021!有休の貯蔵は充分ですか?

 ご承知の通り、本来、2月に実施予定だったSIがコロナ禍によって5月に延期になって今日にいたるわけですが、ちょっと急だった&若干のほんとにやるんか?感があったことから、あまり界隈に前夜祭感が出てない気がします。私も、2月は結構気合い入れて記事書いたり諸々の準備をしたりしてたんですが、今回は座して開始を待つのみです。

 ただ、何もせず本番を迎えるのも味気ないので、本稿では、以前何となく調べてたSI周りのあれこれを皆さんに共有したいと思います。しょうもないことばかりですが、雑学、トリビア的に頭の片隅に置いといていただけると、もしかしたら明後日からのSIを1%増しくらい楽しめるかもしれません。全部で3つあります。よろしくお付き合いください。

2. いろいろ

世界大会の地域別星取表 

  まずは、これまで5年ちょっとの間行われてきた世界大会において、EU、NA、LATAM、APACがそれぞれどのような戦績だったのかについて見てみましょう。

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 SI2017から最後に行われた世界大会であるSI2020までの全205試合をまとめました。これを見ると、現在の地域ごとの序列はEU>NA>LATAM>APACであると言わざるを得ませんね…。圧倒的な勝率がそれを物語っています。

 ただし、これまではこの序列だったかもしれないですが、SI2021でそれが逆転する可能性は大いにあります。メタの変化+今回の圧倒的な試合数ですね。撃ち合いが重視される昨今の環境ではラウンド取得のための不確定要素が多いので”ワンチャン”が大いに起こりえますし、1年半、地域外に出れなかったことでLATAM、APACが蟲毒的に化けている可能性もあります。数字の上では、圧倒的な試合数、全95試合がこの1大会だけで行われますから、LATAMやAPACが背負ってきた借金を全額返済するかもしれません。見逃せないですね。

非公式世界王者の行く末

  よく、サッカーで語られる概念なのですが、非公式世界王者というものがあります。

ja.wikipedia.org

 ボクシング形式で、タイトルホルダーを倒したチームがチャンピオンだよね、という感じでどんどんベルトが世界を周っていく…というものなのですが、これをシージに適用するとどうなるのか、調べてみました。SI2017 チャンピオンのContinuumを初代「非公式世界王者」と定め、試合に負けたら王者交代のルールでどのチームが現在ベルトを持っているのか追跡しました。SiegeGGをソースにしているので、そこに記載されていない試合は追っていません。あしからず。

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 ということで、現非公式世界王者はMirageとなりました。だいたいいつも、世界大会でベルトが渡って地域内をグルグルしてまた世界大会に戻ってベルトが優勝者に渡る…という流れだったのですが、今季のNAは魔境でしたね、ベルトは世界大会に還ってきませんでした。Mirageさんには向こう3か月、大事にベルトを磨いてもらって夏のMajorに出てきてほしいです。

ちょっと期待してるジンクス

  ジンクスってほどでもないのですが、「世界王者がAからBに代わる時、直前の世界大会でBがAからマップをもぎ取っている」という流れがあるように思います。SI2019 で優勝したのはご存知の通りG2ですが、その大会で唯一マップを獲得したのはSSG、翌年のワールドチャンピオンです。

 サンプルはこれだけですが、ちょっと脚本があるんじゃないかってくらいうまくできたストーリーなので、今年もこの流れに期待したいところです。ちなみに、該当してるチームはTSMとNiPです。

3. おわりに

  オチが弱いのですが、こんな感じのTipsを共有したくて書いてみました。皆さんも何かあればTwitterなどで教えてください。泣いて喜びます。よろしくお願いします。

これで分かれ!X-MOMENTスタッツ完全攻略マニュアル

1. はじめに

 最近、Youtubeのコメント欄をよく見るんですけど、「けんきさんいますか?」「When does Beaulo play?」「🌵」のほかに、「KOSTって何?」というコメントをよく見かけるようになりました。RJL2021では選手のスタッツを頻繁に紹介しており、その中で特に馴染みの薄いKOSTに対して皆さん疑問を持っておられるんだと思います。

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こういうやつ

 上の画像のように、KPR、HS、KD、PLANT、SRV、KOST、地上へラペリングした神がまとめて紹介されることが多いですが、それぞれのスタッツが何を意味し、どういう解釈が可能か、知っておくとよりRJLを楽しめるんじゃないでしょうか。

 そこで本稿では、KPR~KOSTについて、その算出式と私なりの解釈を紹介します。皆様の試合観戦の参考になりますように。二つ名をどうやって決めたかは本人にクソリプして聞いてみてください。

2. 各スタッツ紹介

KPR

 KPRはKill Per Roundの略で、「1ラウンドあたり平均どれだけキルしているか」を示します。こんなんなんぼ高くてもいいですからね、という指標ですが、「高い=すごい」である一方、「低い=すごくない」とはならないタイプの指標ですね。いわゆるフラッガーの人は高いと嬉しいですけど、サポーターはそのフラッガーのKPRを高めるための動きをすることもあると思うので。これはどの指標にも言えるんですけど、Aさんのスタッツが高いことはAさんの凄さだけではなく、それを支えるチームの凄さも表現していると思います。今はどうしてるか知らないですけど、Afroさんの進行を支えるShiNさんのドローニングの上手さが、AfroさんのKPRに寄与している、という見方もできますよね。

HS

 Headshot%ですね。「ガンファイトで獲得したキルのうちヘッドショットの割合」を示します。観戦厨である僕個人としてはあまりこの指標に意味を感じていなかったのですが、amenboさん曰く、「エイムの綺麗さ」を示す上でとても有用な指標であるとのことです。エイムの綺麗さはガンファイトの強さの要素の一つですから、まあ間接的に強さを示してると言えなくもなくなくない?という感じです。

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 KD

 KillとDeathです。説明するまでもないですね。KPRと似ていますが、あちらが殺意の高さを示す指標であるのに対し、こちらで見るべきはKillとDeathの差からわかる死ににくさでしょう。人数有利をどれだけ創出できているか?を見たいですね。単純なものですが、K高D高、K高D低、K低D低、それぞれその選手の個性が出てくる指標なのでじっくり見比べてみると面白いかもしれません。

PLANT

 設置回数ですね。ディフューザー持ちは大体チームで固定だと思うので、個人のPLANT≒チームのPLANTとなります。すなわち、PLANTが高い選手がいるチームは現地に圧力かけて刈り取るか、セットに寄りたいチームか、というところが見えてきます。例えば、今(第4節終了時)のところPLANT上位選手はCRESTのWh1skey選手、GUTSのCrazyPapiyoN選手、NthのWendyzera選手ですが、CREST、Nthは拠点を一掃した結果設置に入っていることが多く、GUTSは設置の駆け引きを最終目標に組み立てている印象が強いです。あと、細かいことですが、本当はPLANT Per ATK Roundで見たいところです。

SRV

Survive%ですね。「最後まで生存したラウンドの割合」です。高い方がいい!ですが、ロールによって適正値みたいなものがある気がします。アタッカーとサポート、遊撃と現地。アタッカーとか遊撃やって前で当たってるのにSRVが高い(30%~)みたいな人はほんとにすごいんやな…と思います。CAGがヤバいことでおなじみですね。

KOST

 よく分からない of the YEARことKOSTです。Kill、Objective、Survive、Tradedの頭文字を取った語です。色んな表現がありますが、僕は「無駄死にしなかったラウンドの割合」が一番適当な表現じゃないかと思っています。算出式(予想)は下記リンクをご参照ください。(ダイレクトマーケティング)

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  KOSTはアタッカーでもサポートでも、全ての選手を一つの物差しで測ることを目的として作られた指標で、基本的にはその理念に適った運用ができていると思います。ただし、これは個人的な意見ですが、構造上、①マルチキルの貢献度を測れない、②1の動きをする選手が低くなりがちであるため、後方の選手の方が高く評価されやすい指標だと思っています。華々しくはないけど堅実な選手が上位に来やすいかもしれません。

3. 終わりに

 いかがでしたか?おそらく大半の方がKOST以外は分かるけどKOSTって何?っていう感じだと思うので、このエントリーでそのもやもやが解消されれば幸いです。

 試合を観ずにスタッツだけで語ることは論外ですが、試合を観る前の補助線、観た後の主観との乖離を知るうえでスタッツはとても有用です。ぜひ楽しいシージライフにスタッツを加えていただけると幸いです。

 最後になりますが、個人的にとても好きな、ある試合のスタッツを載せておきます。このスタッツの良さが分かる人とはいい酒が飲めそうだw(激寒構文)

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https://siege.gg/matches/4786-apacl-apac-electrify-esports-vs-excelsioronyx

Sengoku Gamingに見る「セカンドブラッド」の重要性

1. 序論:RJL2021におけるファーストブラッド取得率と取得時勝率

 暖かい通り越して暑いくらいの今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。RJL2021は第3節が終わり、いよいよ今週末には無敗同士の首位攻防戦が待ち構えています。CAGがこの位置にいるのはまあ順当と言えますが、ピッタリその背中に着けているチームがAPAC Northに属するFAVでもGUTSでもなく、Sengoku Gamingであるということは、失礼ながら些か予想外と言えるのではないでしょうか。レジェンドプレイヤーであるReyCyil、Ramuだけでなく、"ハッピーボーイ"A1kyan、"始まりの勇者"Febar、"ラストサムライ"YahooNという凸凹三銃士がそれぞれいい味を出しており、ここまで絶好調と言えるでしょう。土曜日が楽しみですね。

x-moment.docomo.ne.jp

 ここに一つの興味深いデータがあります。表記の通り、ここまでのFB取得率と取得時の勝率を8チーム分、下の散布図にプロットしました。

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 半年ほど前にこのブログでも取り上げたように、ファーストブラッド、FBを獲得することができれば、攻防に関わらずラウンド勝率は向上することが知られています。

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  従って、散布図の縦軸、FB取得時勝率を見ると、全てのチームが50%を越えており、勝率の向上を感じることができます。そしてここから、「順位が高いチーム=ラウンド取得率が高いチーム=FBを多く獲得しているチーム」というもっともらしい仮説が立ちます。しかし、横軸に着目して散布図を見てください。何だか変な位置にいるチームが見えませんか?

 Sengoku Gaming(以下、SG)は現在無敗で2位につけているにもかかわらず、FB取得率が40%に満たず、8チーム中ワーストとなっています。FB取得時の勝率は約7割と流石の数値を取っていますが、そもそもFBが取れていないため、先の仮説から外れたチームとなっています。FBを取り、人数優位を確立して試合を運ぶことは勝利のための定石と言えそうですが、ことSGに関してはこの原則が通用しません。なぜこのような現象が起きているのでしょうか。

 試合を何回か見たりTwitterで聞いたりして、自分なりにこの反例に対して新たな仮説を立てました。SGというチームは取りたいエリアを取るためにいわゆるファーストペンギンのようなフラッガーの使い方をしており、先頭が潰されても、それを基に情報を得たり引きを抑えたりピークを誘ったりクロスを崩したり、2の矢3の矢で相手を潰してエリアを取り切る的な動きを意図している、というものです。すなわち、チームのプラン上、FBを拾ってマクロな人数有利を活かすという考えが薄いのではないでしょうか。

 もしそうなら、SGの強さを数字で示すためにはFBのみならず2回目の命のやり取り、「セカンドブラッド」のデータを持ってくる必要がありそうです。SGがセカンドブラッドを多く取得しており、かつ、その際の勝率が高ければ、もしかするとそれがSGの強さを示す指標になるかもしれません。

 ということで、本稿では、RJL2021におけるSGのセカンドブラッドに関するデータを集計し、SGの強さの要因に1ミリでも近づくことを目的とします。

2. 方法:セカンドブラッドの集計

 RJL2021を観戦しながら、下表のようなキルログを全試合分(第3節まで)記録しました。

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  このキルログから、ファーストブラッドを獲得したチーム、セカンドブラッドを獲得したチーム、ラウンドの勝敗を抽出し、集計に用いています。

3. 結果と考察:SGはセカンドブラッドで優位に立っているか?

 SGがプレイした全76ラウンドにおけるセカンドブラッド事情を下表に示します。

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 ファーストキル、セカンドキルを取って人数状況5-3になった際にはほぼ確実にラウンドをものにしていることが分かりますが、この表で注目してほしいポイントは右の2列、「SGがファーストデス」したシーンの勝率分布です。
 ラウンド数を見ると分かるのですが、SGの試合で最も多い展開は、「SGが最初に1枚失うも、そのあと取り返して4-4に持っていく」というものです。やはりFBをきっかけに盤面を動かしトレードに持ち込むことで、エリア状況は優位にしつつ人数イーブンを保つという戦局を作り出しています。そうなると、攻撃なら侵攻が進んでいる、防衛ならエリアを取り返しているあるいはキープしているという状況が想像されるため、SGの優位が保たれ、ラウンド勝率が70%と高め安定になります。ここから、他のチームとの相違点として、SGはFBを取られた後にトレードを成功させるクオリティが高く、それが勝利に強く結びついていることが挙げられるかと思います。

 SGだけ見てもピンとこないと思うので、FB取得時勝率が同程度のTeam NORTHEPTION(以下、Nth)を比較対象として持って来ましょう。Nthがプレイした全95ラウンドにおけるセカンドブラッド事情を下表に示します。

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 SGと異なる傾向が見て取れます。Nthの勝ち筋はFB取得後、勢いに任せてセカンドブラッドも取得するスタイルであり、こうなると85.2%の勝率を誇っています。逆に、ファーストブラッドが取れたとしても、トレードにつなげられると勝率は大きく下がり、よくて5割、という感じになっていますね。ファーストデス後、セカンドキルでトレードに持ち込んだとしても、Nthは勝率44.4%にとどまっています。Nthも大概特殊なチームですが、SGの傾向が他チームとは異なる、という傍証になるのではないでしょうか。

4. 結論

 ちょっと無理やりな感じもしますが、SGはファーストブラッドで優位を取るチームではなく、セカンドブラッド以降も含めてデスで盤面を動かしつつ最終的に誰かが生き残る、という形を指向しており、それが成功しているチームと言えるのではないでしょうか。ファーストブラッドを取ることは勝利のために重要な要素ですが、仮にそこで人数不利を背負ったとしても、そのデスを無駄にせず盤面を動かす駒として使うということが、実は一番重要なのかもしれません。(一般化できない変態的な戦術な気もしますが)

 SGで一番先頭を務めている選手は状況に応じてFebar選手かA1kyan選手のどちらかだと思いますが、彼らは単なるフラッガーではなく、チームのために身を張るサポーターと言えるかもしれないですね。彼ら個人のエントリーのスタッツが良くなくても、後続の仕事を楽にするための貢献が十分にできているという証左が、SGの現在の順位に表れているかと思います。

 なんにせよ、今週末のSGとCAGの天王山第一ラウンド、我々視聴者は「セカンドブラッド」に注目して見ると面白いかもしれませんね。おすすめです。

HS率の算出式を再考する会

1. 序論

 突然ですが、ヘッドショット率(HS率)ってどう思いますか?「ガンファイトの強さ」を表現するときによく用いられる指標だと思いますが、個人的には、今の計算式だと本当に「ガンファイトの強さ」を示せているのか微妙な気がしています。あれって、今の計算式だと

HS率 = HSを決めたキル数/撃ち合いによるキル数

 って形で表されてるんですよね。前々から疑問だったんですが、分母、これでいいんでしょうか。HS率が「ガンファイトの強さ」を示すためのものだとしたら、分母に来るべきは「デスを含むすべてのガンファイトの回数」ではないでしょうか。極端な話、10回ガンファイトして1回しか勝てなかったけど、その時はHS決めてたよってケース、HS率は100%になりますけどガンファイトに強いわけではないですよね。だったら、デスも含めた数字が分母に来た方が「ガンファイトの強さ」を示すという目的に適う気がしています。

 ということで本稿では、RJL2021の第2節までを題材として、現行のHS率に対してHS率βを独自に算出、比較検討してみたいと思います。

2. 方法:HS率βの算出式

 上記の通り、現行のHS率は

HS率 = HSを決めたキル数/撃ち合いによるキル数

 と算出されています。

 これに対して、HS率βを

HS率β = HSを決めたキル数/撃ち合いによるキルとデスの和

と定義します。分母をKのみからKD両方にするわけですね。

 RJL第2節までの8試合について、SiegeGGから必要な数値を参照するとともに個人的に取ってるスタッツからHS率βを算出、現行のそれと比較しました。

3. 結果

 現行のHS率とHS率βの上位10名をそれぞれ下表に示します。

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 いかがでしょうか。デスが分母に入ったため、全体的にパーセンテージは落ちています。βの方は分母に撃ち合い全体と近似できる数値を置いているため、例えば1位のKohk1選手は撃ち合いのうち4割をヘッドショットで解決していると言えるでしょう。現行のHS率よりも直感的に伝わるのではないでしょうか。

 メンバーはほとんど左右の表で変わっていませんが、Anitun、Gatorada両選手がβでは新たにランクインしています。現行のHS率と比較して、「死なない選手」がランクインしやすくなったと言えるのではないでしょうか。この手の指標って結局、見た人の納得度が高い方が優秀だと思うので、このランキングを見比べてみて、どっちがいい感じか考えていただけると幸いです。

4. 結論

 現行のHS率と、「ぼくがかんがえるさいきょうのHS率」の比較を行いました。どっちが良いかは正直分からんですね。

 このゲームのキルデスは西部劇の決闘のようなイーブンな状況での正面からの撃ち合いではないため、現行もβもそれ自体が「撃ち合いの強さ」に対する近似値でしかありません。シーズンによって数値も変わるでしょうし。そもそも、HS率を基に何かを判断するのが間違いなのかもしれません。謎の多いスタッツだなあという感想を改めて持ちました。

関連記事:

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RJL2021ガジェットグランプリ途中経過(2021年3月21日)

1. 序論

 久しぶりの更新となりました。S.I.が延期になったのでネタが無かった…

 凪の2月を越えて、3月に入ってから怒涛の試合数ですね。トップリーグ+RJLを網羅しようと思うと、とてもじゃないけど時間が足りないので、断腸の思いで見る試合を制限している今日この頃です。ただ、RJLに関しては土日開催ということもあってじっくり見ながらスタッツを取っています。俺たちのSiegeGGが基本的なところは公開してくれているので、僕はキルログを中心にマニアック指標を取っていこうかなと。

 以前、APAC North Stage1を題材にガジェットキルの個数をカウントしてたんですが、RJL2021でもちょくちょくそれを取ってます。本稿では、第2節までの個人ランキング中間発表に加えて、ガジェットキル回りの細々したことを書こうと思います。

2. 方法

 RJL2021の第2節までの8試合を観戦し、ガジェットキルの個数をカウントしました。カウントのルールとして、

  • キルログにガジェットアイコンが生じた場合をカウントする
  • そのため、ガジェットによるインジャーはカウントしない
  • ウェルカムマットによるインジャーはガジェットキルには含まないが、別途カウントはしている
  • ケルトンキーなど銃型ガジェットによるキルは含まない

という制約を設けています。

 カウントしたガジェットキルを選手ごと、チームごと、ガジェット種類ごとに整理してまとめました。

 一応、ダブルチェックをしていますが、数え忘れがあるかもしれないので、その際にはご指摘いただけると幸いです。修正させていただきます。

3. 結果

APAC North Stage1との比較

 ここまで、RJLでは188ラウンドで64回のガジェットキルが発生しています。すなわち、だいたい3ラウンドに1回、誰かがガジェットで飛ばされているわけです。一方、APAC North Stage1、去年の夏ごろでは823ラウンドで180回のガジェットキルが発生しました。だいたい5ラウンドに1回の割合で飛ばされていたわけですね。

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 参加チームも違えばラウンド数も違うので一概に比較することは難しいですが、単純に考えれば、ガジェットキルの頻度が増加していることがここから伺えます。

これは、

  • 攻撃側はフラググレネードをガジェット破壊ではなくキル目的で使える
  • 防衛側は盾持ちや有刺持ちよりもニトロ持ちのプレゼンスが高まっている

ことが理由として考えられます。所謂ガジェットメタが終焉を迎えたこと、MELUSIの登場により有刺鉄線の価値が下がったことが、ガジェットによるキルを間接的に増やしているのではないでしょうか。ガジェットメタが終わったことで撃ち合いの重要性が増加しつつも、ガジェットキルの重要性も増していることが見て取れます。

ガジェットの種類

 ここまでのガジェット種別キル数は下図の通りです。

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 ニトロセルが全体の60%超を占めていて、次点でフラググレネード、その他が6つ、という順当な形。その他の内訳は、X-KAIROSランチャー、クレイモア、ボルカンシールド、ウェルカムマット、遠隔ガスグレネード、インパクトグレネードが各1つずつとなっています。X-KAIROSキルはむこう1年くらい見ない気もしますが、遠隔ガスグレネードがそれほど伸びていませんね。SMOKEのプレゼンスが下がっていること、攻撃側が時間に余裕を持っていることが要因かもしれませんね。

 ちなみになんですが、ウェルカムマットによるインジャーはここまで7回。おそらくですが、そのうち4回がSuzuC選手の仕掛けたマットです。怖い。

 

チームランキング

 ここまでのチーム別ガジェットキルランキングは下表の通りです。

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 ラウンド数がそれぞれ違うので比較にあまり意味はありませんが、ここで気になるのはエヴァ:eの数字です。これ、数え損ねていたら本当に申し訳ないのですが、ここまでニトロセルによるキルがありません。ガジェットキルが多いから勝てる、ということでは決してないですが、攻撃側の侵攻に対してガジェットをカードとしてうまく切れていないように思います。ただ、ガンファイトが持ち味のチームだと思うので、無問題な気もします。

個人ランキング

 最後に、ここまでガジェットキルが多かった上位11名は下表の通りです。

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 トップはノーセプのSpeakEqsy選手(5キル)。ノーセプの熱きリーダーはガジェットキル職人でもあり、ここまで5人をニトロセルで葬っています。

 同率2位(4キル)で5人が並び、SuzuC選手、RABBIT選手、febar選手、No2.選手、ShiN選手となっています。どの選手も所謂シージIQが高いガジェットキルを魅せていますね。前述の通り、SuzuC選手はフロストマットの扱いに相当定評がありますが、それ以外にもさすがのシージ力をガジェットキルで見せています。RABBIT選手はガジェットに限らず自由な動きの中でキルを取っているイメージがあり、相手からすると読みにくいタイプのプレイヤーではないでしょうか。febar選手は今大会唯一のニトロセルトリプルキルを達成しています。No2.選手は不調にも見えた第1節から一転、第2節ではガンファイトのみならず十八番のガジェットキルでも存在感を示しています。ShiN選手は変態的なニトロが多いですね…。

 同率7位(3キル)にはTaipon選手、Ramu選手、Wh1skey選手、CrazyPapiyoN選手、Kohk1選手の5名がランクイン。Taipon選手はロールが変わった?からなのかガジェットキルを増やしてますね。Ramu選手がノーセプ戦のクラブ地下でSekiheki選手を壁越しに飛ばしたニトロは芸術点トップだと思います。Wh1skey選手は自由なLstの面々の最後方でがっちり現地を守ってるイメージなので、今後もSMOKEの遠隔ガスグレネードでガンガン持っていくかもしれません。CrazyPapiyoN選手はAPAC Northでもガジェットで多くのキルをもぎ取っており、ベテランの安定感を感じます。Kohk1選手はHS%の高さに代表される撃ち合い猛者ですが、ガジェットでもキルを稼いでます。ずるです。

 ちなみに、APAC North Stage1でガジェットキルが最も多かった日本人選手はAyagator選手でした。フラグ持ちを使う機会が減っている気がするのでランクインは難しいかもしれませんが、期待したいところです。

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4. 結論

 以上、第2節までのRJL2021ガジェットキル状況をまとめました。ガジェットキルは相手側の射線に身を投じずにキルチャンスが生じるため、これが多いと人数有利の観点で美味しいですよね。直接的に勝敗に絡むほどの数ではないですが、そこそこ重要な指標になりうると思っているので、RJL2021を通してガジェットキルは追い続けます。たまに発信するかもしれません。よろしくお願いいたします。

ボツ記事供養:S.I.2021注目プレイヤー10傑

0. はじめに

 このエントリーはSix Invitational 2021の開催に合わせて投稿しようと思っていたものです。先日UBIよりInvの延期が発表され、残念ながら無意味なエントリーになってしまいました。しかし、せっかく書いたわけですし、とりあえず原文ママでアップしておくことにします。いつまたInvが開催されるか分かりませんが、それまでは夢の続き、楽しい楽しい事前予想を楽しみたいと思います。

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1. 序論

 いよいよSix Invitational 2021が目前に迫ってきましたね。年に1度のシージ界の祭典で、昨年から競技シーンが再編されており、今回は過去最多の19チームが参戦します。残念ながら、オーストラリア当局の判断によりWildcard Gamingが参加を見送ることになりましたが、我らがAPAC地域からも3チームが出場を決めています。活躍に期待したいです。

ところで、せっかくのお祭りですし、普段推しているチーム以外の試合も楽しみたいですよね。そのためには、事前に各チームのスタッツを確認し、選手やチームの特徴をなんとなく把握しておくことが有効です。スタッツはあくまで選手の能力の氷山の一角ですが、何もわからないよりは断片的にでもわかっていたほうが試合観戦が捗るでしょう。本稿ではスタッツ把握の一例として、最近のプロリーグで特徴的なスタッツを残しており、Invでの活躍が期待される選手10人を紹介したいと思います。より楽しいInv観戦ライフの一助となれば幸いです。

2. 扱うスタッツの解説

 今回取り上げるスタッツを簡単に紹介します。なお、断りがない限り、本稿で扱うスタッツは全て4大リーグ(EU、US、Brasileirão、APAC North)の2020 Stage2における数値です。数値は全てSiegeGGから引用しています。

K-D

 何人キル(K)したか、何度デス(D)したか、その差分を示しています。
 K-Dが大きい選手はチームの勝利に大きく貢献していると言えます。

EntryK-D

 K-Dのうち、ラウンドの最初に生じたものに注目した指標です。
 序盤に人数有利を獲得することは試合に勝つためにとても重要であり、フラッガーの強さを見る上で役に立ちます。

Plant

 攻撃においてディフューザーを設置した回数です。
 チーム単位でPlantの数値を見ることで、そのチームの攻撃スタイルがおぼろげに分かります。

1vX

 クラッチ力が高い選手を示すスタッツです。
 多いと嬉しいですが、多すぎるチームはもしかすると作戦面でうまくいっていないのかも…?

SRV

 最後まで生存したラウンドの割合です。
 サポーターかつ撃ち合いが強い選手が高くなるスタッツです。

 以上のスタッツを基に、個人的・Inv注目選手を10人紹介したいと思います。

3. 注目選手10人

BriD(EU, BDS Esport)

K-D:+14(58-44) EntryK-D:-3(1-4) Plant:8 1vX:2 SRV:53%

 まずは優勝候補BDS EsportからBriD選手です。彼は「BDSと言えばShaiikoのワンマンチーム」というステレオタイプを打破した選手だと僕は思っていて、特筆すべきはSRV53%という驚異の生存力。Inv参加の19チーム95選手の中でナンバーワンの数字です。ShaiikoやElemjzeらを倒してもまだBriDがいる、という絶望感を与えられる存在だと思います。

Aqui(EU, Mkers)

K-D:+32(138-106) EntryK-D:+14(33-19) Plant:4 1vX:2 SRV:27%

※データはSix Invitational 2021 Europe Qualifierより

 今大会のダークホース枠、MkersのフラッガーのAqui選手は出場選手中、最もEntryK-Dの数値が高い選手です。速い攻めとハードピークが特徴的なチームの中で、Aqui選手は核弾頭的な働きをしています。遠隔ガスグレネードやボルカンシールドの爆風をものともせず前進し続ける彼のASHは見ていて清々しいですね。

m1loN(EU, Virtus.pro) / Ayagator(APAC, CYCLOPS athlete gaming)

m1loN:

K-D:+21(79-58) EntryK-D:+8(11-3) Plant:2 1vX:0 SRV:39%

Ayagator:

K-D:+20(89-69) EntryK-D:+8(11-3) Plant:4 1vX:3 SRV:32%

 一見すると毛色の違うこの2人は、Entryの勝率が最も高いという共通点を持っています。「最もファーストブラッドを貰わなかった選手」と言い換えてもいいかもしれません。早々にやられることなく与えられたタスクを堅実にこなす、職人的な選手と言えるのではないでしょうか。2年ぶりにInvに出場する日本チームとしてCAGには期待が大きいですが、特にAyagator選手の職人技に注目していきたいです。

HysteRiX(APAC, Giants Gaming)

K-D:+45(109-64) EntryK-D:+8(21-13) Plant:1 1vX:2 SRV:39%

次はAPACの巨人、GiantsからHysteRiX選手です。この人のプレイスタイルでSRV39%はちょっと高すぎますね。一人で動いて相手のフォーメーションの間に入っていくスタイルの選手だと思うのですが、高いリスクを背負っていながら最終的に生き残っている超人です。この人くらいリーグで突出して活躍している選手が他地域の強豪をどこまで破壊できるのか、見てみたいですね。

Canadian(NA, Spacestation Gaming)

K-D:-5(60-65) EntryK-D:+2(9-7) Plant:16 1vX:1 SRV:32%

 みんな大好き、世界王者SSGのCanadian選手はプラント率(Plant数/攻撃ラウンド数)が全選手中最も高い選手です。Canadian選手自身が凄いのはもちろん、ここまでプラント率が高いのはSSGのチームとしての特徴が色濃く出ている気がします。役割意識がはっきりしていて、決め事を確実に実行する高いスキルが各人に備わっていることが感じられますね。ロールチェンジが最近あったみたいですが、それがどう影響するかも注目です。

Chala(NA, TSM)

K-D:+13(75-62) EntryK-D:-2(4-6) Plant:0 1vX:6 SRV:49%

 NA2人目の選手は、NA王者TSMからChala選手です。全選手中、1vX率(1vX数/全ラウンド数)が最も高く、20ラウンドに1回はクラッチしているので、TSMの試合を2マップ見たら1ラウンドはChala神になります。US Finalでの活躍も記憶に新しいですが、東のBriD、西のChalaという影のエースががぶつかり合うかも、というのも世界大会の醍醐味ですよね。

Faallz(LATAM, Team oNe Esports)

K-D:+24(144-120) EntryK-D:+14(22-8) Plant:15 1vX:3 SRV:37%

 ブラジルリーグ1位のoNe所属のFaallz選手は、サポーターなのにEntryが高い&その勝率もすごいという不思議なプレイヤーです。oNeというチームはEntryの数字が1人の選手に固まっておらず、全員が等しく前線で戦っているように見えます。注目したいチームですね。あと、Faallz選手はめちゃくちゃイケメンです。選手の顔が見えるのもオフライン大会ならではです。

Muzi / pino(LATAM, Ninjas In Pyjamas)

Muzi:

K-D:+49(159-110) EntryK-D:+4(22-18) Plant:0 1vX:3 SRV:40%

pino

K-D:+42(155-113) EntryK-D:+16(38-22) Plant:2 1vX:3 SRV:38%

 最後に、昨年準優勝のNinjas In PyjamasからMuziとpinoのダブルエースについて。ちょっとマニアックなスタッツになりますが、「最もK-Dの合計値が大きいコンビ」です。「最強のふたり」ですね。どちらかをつぶしてもなお油断できないという存在は対戦相手からすると脅威ですよね…!今年も上位に食い込み、あわよくばハンマーを掲げそうです。

4. 結言

 以上、スタッツ的に気になる10選手を紹介させていただきました。SiegeGGで出場各選手のスタッツを見ることができるので、よく知らないチームについてInv開幕前に予習しておくと、今まで知らなかったけど魅力的な選手やチームを発見できるかもしれません。Invまでの待ち遠しい時間のお供にスタッツ、おススメです。